マニラのeそよ風

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第333号 2006/02/25 聖母の土曜日

トマス・アクイナス

アヴェ・マリア!

 愛する兄弟姉妹の皆様、
 こんにちは!お元気ですか。

 バチカンの発表によると、3月24日付で新しく15名の新しい枢機卿様たちが生まれるそうです。そのリストは次で見ることもできます。
外国語サイト リンク http://www.catholic-hierarchy.org/events/c2006.html

 アジアからはソウル大司教区のニコラオ鄭(チョン)ジンソク大司教(金寿煥枢機卿に続く韓国人として2人目)が、また、香港司教区のヨゼフ陳日君司教様が(今年74歳、今回の任命で6人目の華人枢機卿、香港教区では故・胡振中司教に続いて2人目)が選ばれました。
 願わくは天主の御恵みにより、新しい枢機卿様たちがカトリック教会の聖伝の復興のためにご活躍なさいますように! 兄弟姉妹の皆様、たくさんのお祈りをいいたしましょう。


 有名なアマゾンという通信販売の会社では「ウィッシュリスト」というものがあるようです。自分の誕生日や記念日などのためにウィッシュリストを作成して、家族やお友だちに知らせる・・・というもののようです。なんだかあつかましいリストですが、インターネットでそんなリストを作らなくても、イエズス様にはそんなリストがあるはずです。

 それにしても、日本の交通の便が良く兄弟姉妹の皆様が集まりやすいところに、聖ピオ十世会の教会と修道院、美しく清潔で祈りやすい雰囲気の教会、聖伝を守る歴代の教皇様たちの教えと正統神学を深く学んだ聖ピオ十世会司祭たちの常駐、兄弟姉妹の霊的必要にすぐに答えることができるような聖ピオ十世会の司祭が兄弟姉妹の皆様のすぐそばにいること、が「ウィッシュリスト」に書き込めてすぐ叶えられたらどんなに良いか、と思いました。子供のようです。

 四旬節がますます近づいていますので、今回も聖トマス・アクィナスの言葉の続きを紹介したいと思います。『神学大全』第三部 第46問 第2項「キリストの受難による以外に、人間の本性の解放の他のやり方の可能性があったか」の日本語訳をお送りします。原文となったラテン語は次をご覧下さい。
外国語サイト リンク CORPUS THOMISTICUM / Sancti Thomae de Aquino / Summa Theologiae / tertia pars a quaestione XLVI ad quaestionem LII / Quaestio 46

 良き四旬節となることをお祈りしつつ。

 天主様の祝福が豊かにありますように!
 聖母の汚れ無き御心よ、我らのために祈り給え!
 ファチマの聖母よ、我らのために祈り給え!

 トマス小野田圭志神父(聖ピオ十世会司祭)


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神学大全 第三部より

第46問 キリストの受難について

第2項 キリストの受難による以外に、
  人間の本性の解放の他のやり方の可能性があったか。

第2について次のように進められる。キリストの受難による以外に、人間の本性の解放の他のやり方の可能性はなかったように思われる。

【異論】

異論1 何故なら主は「もし一粒の麦が地に落ちて死なないなら、ただ一つのまま残る。しかし死ねば、多くの実を結ぶ。」(ヨハネ12:24-25)と言われた。それについてアウグスティヌスは「ご自分のことを一粒の麦と言われた」と言う。従って、キリストが死の苦しみを受けない限り、私たちの解放という実は出来なかった。


異論2 更に、主は聖父に「私の父よ、この杯を私が飲まずにはすごせないものなら、何とぞ、み旨のままに!」(マテオ26: 42)と言われた。そこで主は受難の杯について話している。従って、キリストの受難は避けて通れなかった。従って、ヒラリウスも「ゆえにこの杯は、主が飲まずにはすごせない。何故なら主の受難によるのでなければ、私たちが償いを受けることは出来ないからである」と言う。


異論3 更に、天主の正義は、「キリストがその受難を通して天主の正義を満足させる」ことによって、人間が罪から解放されることを要求していた。しかしキリストはご自分の正義を曲げることは出来ない。何故ならこう言われているからである。「私たちが不忠実であっても、天主は、つねに忠実である。天主がご自分を否むことはないからである」(2ティモテオ2:13)。ところでもしもキリストが正義を拒んだとしたら、キリストはご自分を否むことになってしまう。何故ならキリストは正義そのものだからである。従って、キリストの受難による以外はその他の方法で人間を解放することは出来なかったと思われる。


異論4 更に、信仰は偽りのもとにあることが出来ない。ところで旧約の太祖たちは、未来にキリストが苦しみを受けるだろうと信じていた。従って、キリストが苦しみを受ける以外ありえなかったと思われる。


【しかし反対に】

 しかし反対に、アウグスティヌスは『三位一体論』第13巻でこう言っている。「天主と人間との仲介者である人間イエズス・キリストを通して私たちを天主がかたじけなくも解放して下さったそのやり方は、良きものであり天主の尊厳に相応しいと私たちは言おう。しかし天主にはその他の真のやり方も可能であったし、天主の力に全てのやり方が等しく従属している、ということも私たちは明らかにしよう。


【回答】

 答えて言わなければならない。何かが「可能である」或いは「不可能である」とは2つのやり方で言われる。第1には、端的に絶対的な意味で言われる。第2にはある前提に基づいてそう言われる。従って、端的で絶対的に言うと、キリストの受難による以外でもその他の方法で人間を解放することは天主には可能であった。「天主には、おできにならないことはありません」(ルカ1:37)。しかし或る前提に基づけば、不可能であった。何故なら、キリストの受難に関する天主の予知と予定を前提と考えると、天主の予知が誤り、その意志や配慮が中断することは不可能なので、キリストが苦しまないこと、またキリストの受難以外のやり方で人間が解放されることは同時に可能ではなかった。そして天主によって予知され予定されていること全てについては、第1部(第14問 第13項、第22問 第4項、第23問 第6項)で論じられたのと同じ理由である。


【異論に対する回答】

 異論1については、それゆえ、言わなければならない。主はそこでは天主の予知と予定を前提に話されている。天主の予知と予定に従えば、キリストが苦しむ以外には人類の救いの実りがもたらされないことが秩序付けられていた。

 異論2について言われた「私の父よ、この杯を私がのまずにはすごせないものなら」も同じように、つまり「御身がそのように定めたことのために」と理解されるべきである。それ故に主はこう言葉を続けた。「何とぞ、み旨のままに!」

 異論3については言わなければならない。この正義は、人類から罪の償いを要求するという天主の意志に基づいている。さもなければ、もしも天主の正義を満足させること全く無しに人間を罪から解放することを望んだとしたら、天主は正義に反して行為したのではなかったことになる。他者に対して(例えば他人、或いは国家、或いは長上の君主などに対して)犯された罪を罰するべき裁判官は、正義のために、犯罪或いは罰を免除することが出来ない。しかし天主には、自分に勝るものは存在しない。天主が万物の最高の共通善である。従って、罪には、天主に対して犯すがゆえに過ちの概念があるが、天主が罪を赦したとしても、それは如何なる不正義にもならない。それは誰であれ人は自分に対して犯された侮辱を、償い無しに、憐れみによって赦したとしても不正を行ったことにならないのと同様である。そのため、ダヴィドは天主に憐れみを乞い求めてこう言った。「私は御身にのみ罪を犯しました」(詩篇50:6)。これは「御身は、不正義を犯すことなく、私を赦すことが出来給う」と言うのと同然である。

 異論4については言わなければならない。人間的な信仰、またそれによって信仰が教えられる聖書にある天主的な信仰は、天主の予知と予定とに始まるものである。従って、生起することを前提とする生起の必要性については、天主の予知と意志から生ずることの必要性と同じ理由である。


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===== 以前の記事から =====

【聖ピオ十世会について】

 ◎ カストゥリヨン・オヨス枢機卿「(聖ピオ十世会は)本当の離教ではなかった(it was not a formal schism)」[トレンタ・ジョルノ誌2005年9月号]

 ◎ カストゥリヨン・オヨス枢機卿「(聖ピオ十世会は)離教であるとは言えない(non si puo dire che ci sia uno scisma)。」 (11月13日に放送された、イタリアのチャンネル5(Canale 5)のインタビューで):

 カストゥリヨン・オヨス枢機卿「私たちは異端を前にしているのではありません。正しい、正確な、厳密な意味で離教があるとは言うことは出来ません。教皇の許し無く司教聖別をすることの中には、離教的な態度があります。しかし彼らは教会の内部にいます。・・・」

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【ミサ聖祭に与るときの心構え】
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