マニラのeそよ風

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第310号 2005/11/09
 至聖贖主大聖堂(ラテラン大聖堂)の奉献の祝日

ラテラノ大聖堂


アヴェ・マリア!

 兄弟姉妹の皆様、

 愛する兄弟姉妹の皆様、そしてこれから婚姻の秘蹟によって結ばれようと準備をしている兄弟姉妹よ、私たちは、「カトリック家族とその敵について」の続きを黙想しましょう。

 今回は(16)カトリック家族の敵: 貞潔に背く罪 (その3)をお届けします。ごゆっくりどうぞ。

 聖母の汚れ無き御心よ、日本のために祈り給え!

 天主様の祝福が豊かにありますように!

 トマス小野田圭志神父(聖ピオ十世会司祭)


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カトリック家族とその敵について

----- これから婚姻の秘蹟によって
結ばれようとする兄弟姉妹に -----

(16)カトリック家族の敵: 貞潔に背く罪 (その3)


◆ 不潔の罪は死を早める

 フランスのティソ医師は、モンプリエ出身の医学生であった若い青年は不潔の罪を犯しすぎて若死にしたと語った。この青年は自分の罪を犯すことを考えてばかりおり、ある種の絶望のうちに死を遂げた。彼は地獄がすぐ隣に大きく口を開けて開いており、自分を受け入れるばかりになっているのを見たと思いこんでいた。

 次は別の実話である。時計技師の或る男がいた。彼の名前の頭文字はL.D.といった。彼は17歳になるまでは、徳のある健康な青年であった。しかし18歳になると不潔の悪徳に身を染め始めた。彼はその罪を一日に三回犯した。一年も経たないうちに、彼はその罪を自分で犯すたびに憔悴していくのを感じた。しかし自分の体に感じるこの警告は、その悪徳から足を洗うのに不十分であった。彼の霊魂はすでにこの罪の中毒となっていた。彼はもはや別のことを考えることすら出来なくなっていた。いても立っても彼はその罪を犯したいとばかり考えるようになっていた。そしてその罪を犯せば犯すほどますますもっと犯したいと望むようになり、日増しにより頻繁に罪を犯すようになっていった。彼は、この罪を犯すことばかりに凝り固まり、死期が迫るのを感じるようになった。こんなことをしていては自分は死んでしまう、と気が付いた時にはもう既に時は遅かった。彼はすでにそこから抜け出すことが出来なくなっていた。

 彼は理由もなく痙攣をおこすようになった。この発作は習慣的になり、極めて激しく彼を襲った。時にはこの周期的発作が起こると十五時間も続くこともあった。ひとたび発作が起こると短い時でも八時間は続いた。特に首の後部が極めて痛み出し、叫び声だけではなく唸り声となった。彼はその発作が続く間、何も、液体も固形の食べ物も、飲み込むことが出来なくなった。彼の声はしゃがれ、全身の力は失せた。

 彼は仕事を続けることが出来なくなり、体を休めることすら出来ずに数ヶ月苦しみのうちにのたうち回った。記憶はほとんど失われたが、ただ止むことなく不潔の罪のことだけを思い出した。自分をこのように不幸にし惨めにした罪のことだけしか考えられなくなった。それが彼の良心を呵責でさいなんだ。

 彼は生きていると言うよりもむしろ死体に近かった。体からは悪臭が放ちだしていた。やつれ細り、体を動かすことも不可能となった。水のような薄い血が鼻血としてよく出てきた。口からはよだれを垂らした。彼は、ついに自分の体から出る汚れを口から飲み込むようになった。丁度ブタを見ているようだ。彼の血圧は極めて低いが、脈は速く打っていた。呼吸をするのは彼にとって困難だった。体はやつれていたが、足だけは水腫のように腫れ上がるようになった。

 彼は記憶のみならず、知性を失った。二つの言葉を関係づけることが出来なくなった。考えることが出来ない。自分のことがよく分からなくなってしまった。傷み以外に別の感情を持たなくなった。野獣のようだ。この光景を見て、恐ろしいと思わないことは不可能だ。彼が昔、人間として生きていたと思うことさえ難しい光景だ。  彼はついに、その数週間後の1857年6月17日、頭部から足先に至るまでのむくみの状態で死を迎えた。


◆ 天主の憐れみを当然視してはならない

 別の実話もある。スペインの首都マドリッドに住んでいた若いスペイン人フェルディナンドとアロンソとは、お互いに友達だった。彼らはよい家柄の出であったが不道徳な生活を送っていた。或る夜、フェルディナンドは夢のようなものを見た。突然自分の部屋のドアが開き、恐ろしい形相をした二人の巨人がいきなり彼の部屋に入ってきた。二人の巨人はフェルディナンドを捕まえて、海岸まで信じられない早さで連れて行った。

 その夜は暗く嵐の吹く気味の悪い夜だった。風は荒々しくフェルディナンドの周りに吹きたてた。波打つ海辺は、荒々しく、極めて高い波となった。雷の音は彼の耳をつんざいた。稲妻の激しい光で、彼の目はくらんだ。そして或る瞬間、ピカッと恐るべき光を放ち全てを照らし出したかと思うと、次の瞬間、全てはもとの突然の暗黒に包まれた。

 フェルディナンドは稲妻の光に照らされて極めて多くの人々がやはり海辺に立っていることに気が付いた。数々の幽霊船が海をフェルディナンドの方にむかってやってくるのが分かった。恐ろしい光景だった。地上のものとは思えないような叫び声を上げて、数々の幽霊船が怪物のような船員を前に後に群れのように載せて、彼の方にやってくるのだ。これらの船は海辺にたどり着いた。海辺に着くや、船に乗っていた悪魔のような者どもは海辺に立っていたありとあらゆる人々を片っ端から捕まえて鎖で縛った。そして彼らをみな船に連れて行った。

 連れて行かれる囚人たちの中には、自分の友人アロンソがいるのがフェルディナンドに見えた。その瞬間、恐るべき怪物どもはフェルディナンドの周りを取り囲み彼を捕らえ、船に連れて行こうとした。恐ろしさのあまりフェルディナンドは「イエズス様! マリア様!」とイエズス・マリアの甘美な聖名を大きな声で叫んだ。すると突然、恐ろしい光景は消えた。

 今度は、フェルディナンドは天主の裁きの座に運ばれたのが分かった。永遠の審判者イエズス・キリストが玉座に座しておられる。私たちの主イエズス・キリストの周りには何万、何億もの天使達が取り囲んでいる。私たちの主の右には聖母マリア様がおられた。フェルディナンドは、自分の悪しき生活のためにこの裁きの座で恐るべき宣告を受けるだろうと考えた。フェルディナンドは天主の御母聖マリアを呼び求め、聖母の取り次ぎを乞い求めた。そしてこの世を離れ修道生活を送り償いの生活をすると約束した。彼の祈りは聞き入れられた。フェルディナンドはその時、眠りから覚めた。彼の頬は涙に濡れていた。彼は警告を思い出した。フェルディナンドは天主に修道会に入会すると誓いを立てた。

 翌朝、アロンソがやってきた。アロンソはフェルディナンドが悲しい面持ちをしているのを見て、からかい始めた。アロンソは愉快なパーティーがあるから一緒に行こうと話をもち出した。フェルディナンドはアロンソに自分の見た夢のようなものの話をした。そして生活を改めて修道生活を送る誓いを立てたと言った。

 アロンソはあざ笑った。馬鹿にするようにこう言った。

 「何だって? 修道士になるって? おまえ、俺も連れてってくれる? おいおい、冗談じゃないよ。フェルディナンド、おまえはそんなくだらない話を信じるような婆さんじゃないんだろ! 俺だってさ、救霊を望んでいるよ。そう思うだろ。 俺だって天国に行きたいさ。でもさ、俺はあわてない。俺はまだ若いんだし、老年になるまで何年もある。ほら、ことわざにもあるじゃないか。終わりよければすべてよしってね。」

 その時、女中が階段を上がってきてアロンソにこう告げた。

 「お話中、失礼します。二人の立派な身なりをした紳士のお客様が、いま家の玄関にいらっしゃっております。急を要する重要なお話があるので、あなた様と会ってお話しされたいとおっしゃっています。」

 アロンソは女中にうなずくと、フェルディナンドにこう言った。

 「さあ、おまえな、メランコリックになっておまえらしくないぞ。今晩の楽しいパーティーでさ、しっかり楽しもうぜ。」

 こう言うとアロンソは急いで階段を下りていった。アロンソは玄関先で二人の若い訪問客と会った。実は彼らは、前日、ある女性問題でアロンソとケンカになった相手だった。

 二人の若い紳士はアロンソを見るやいなや、アロンソの方に近づき、鋭いナイフを手にとってアロンソの心臓を突き刺した。アロンソの胸を深く刺すやいなや彼らは逃亡した。アロンソはその場で血まみれになってのたうち回った。

 フェルディナンドは苦しみに満ちた叫び声を聞きつけ、急いで階段を下りた。彼がアロンソの所に駆けつけた時には既にアロンソは息絶えていた。

 この血まみれの殺人現場を見て、フェルディナンドは自分の見た夢のようなものを思い出した。フェルディナンドはすぐ近くのカトリック教会に駆けつけ、司祭の足下に跪き、この悲劇と自分の見た夢と自分の立てた誓いの話をし、それから告解の秘蹟を受けた。フェルディナンドはそして誓いを更新した。フェルディナンドは聖寵の地位を回復し、熱心に満ち、幸せだった。彼は、貧者に施すために、自分の財産を処分した。

 しかし、残念なことに、しばらくすると過去の不潔な情念が戻ってきた。彼はそれに抵抗しなかった。貧しい人たちに自分の富を施す代わりに、フェルディナンドはそれを賭け事と酒盛り、淫乱に使った。彼は淫行の渦巻きの中に、真っ逆さまに身を投げた。あまりの狂気のやりすぎに彼は病気となった。

 天主は憐れみ深く、今度は別の警告を与えた。フェルディナンドは自分の真下に底知れない地獄の深淵が口を開いているのを見た。彼はその中の恐ろしい場所で、無数の霊魂たちが悪魔によって恐ろしく拷問を受けているのを見た。彼はもう一度、自分の前に永遠の審判者、イエズス・キリストの姿を見た。その時だ、悪魔の大群が地獄から湧き出て、フェルディナンドの霊魂をつかみ、深淵の奈落へと引きずりおろそうとした。

 もう一度、苦悩のうちに、この不幸な男は聖母マリアの聖名を呼んだ。そしてもう一度、彼は執行猶予を得た。しかし彼はこれは最後のチャンスだという予感がした。

 フェルディナンドはもうすっかり変わった。彼は償いをし、健康を回復した。しかし健康が元に戻ると、呪われた以前の罪の悪習も戻ってきた。彼の情欲はまた強力になった。彼は罪の機会を探し求めた。彼は、罪に堕ち、以前よりもまして更に悪くなった。罪に溺れて財産を使い果たした彼は、南米に渡った。リマに着くと、自分がそこで稼いだ金を全て使い果たして自分の肉欲を満足させた。その結果、当然のことのように再び病気になった。彼はリマの病院に入院した。そこでもう一度彼は正気に返った。

 フェルディナンドは人をやって聖徳で有名なある司祭を病院のベッドのもとに呼んだ。彼は洪水のような溢れる涙を流しながらこの司祭に告解をした。彼はこの司祭に自分の誓願の話をした。

 善き司祭は、この話を聞きながら、健康が回復したらフェルディナンドが修道会に入会することが出来るように計らうことを約束した。そして別れる前に、また会いに来ると約束した。

 青年フェルディナンドはすぐに健康を取り戻した。しかし元気になるやいなや、善き決心を全て忘れてしまった。例の司祭と会うのを避けるために、すぐに退院した。そしてペルーの国中の至る所に行って、至る所で恥ずかしい不秩序に身を貶めた。

 数年後、救霊に熱心なあの聖なる司祭は、カトリック司祭があまり訪問しないペルーでも最も開発の遅れた寒村にやってきた。高い山々と道もないジャングルとに囲まれた寒村で、この司祭は村の住民に公教要理を教え、病院を訪問した。

 ある日、病院の病床から病床へと苦しむ人々を訪問し、教えたり励ましたりしていると、病室の中央のあたりから低く唸るような声を聞いた。司祭がそこに近づいてみると、恐ろしい光景を目の当たりにした。腐ったゴザの上に男が、いや、ある生き物、腐りかけている骨が体を横たえていた。この骨と皮だけになったものは、頬がこけ、光を失って窪んだ目を持ち、とうてい耐えきれない悪臭を全身から放っていた。皆はこれは、キリスト者の間では名前を言うことさえも許されない情欲の犠牲となった不幸な男だとはっきり言った。司祭は今にも死のうとするこの男に身をかがめた。

 自分のふしだらな情念の悲しい犠牲者は、苦悩の目をゆっくりと開いて司祭を見た。虚ろな声でこう叫ぶように言った。 「正義なる天主! 神父様、あなたはここにいらしたのですか? 私の生涯の全ての罪を知っている唯一のあなたが、私の死を見届けて下さらなければなりません。」

 こう言うと、彼は、野獣のように唸りだした。司祭は彼を励まそうとした。が無駄であった。

 「ノー! ノー! 私に希望などない。もうダメだ。もうダメだ!」

 そして絶望の眼差しで彼はその瞬間息を絶えた。彼の霊魂は、もはやヴィジョンではなく現実に、恐ろしくも現実に、天主の裁きの座の前に現れた。聖書に書かれている聖霊のみことばは何と真実であることか!

 「不潔な者の骨は、青年時代の悪習で満たされ、その不潔は墓場まで彼と共に降りていくだろう。」


 この記事は、
外国語サイト リンク  The Sinner's Return To God The Prodigal Son, By: Rev. Michael Mueller, Chapter 1
を参考にしました。

(つづく)