第290号 2005/08/05 雪の聖母の大聖堂献堂の祝日
アヴェ・マリア!
兄弟姉妹の皆様、お元気ですか。
「カトリック家族とその敵について」の続きです。
(2)婚姻の目的 をお届けします。ごゆっくりどうぞ。
トマス小野田圭志神父(聖ピオ十世会司祭)
カトリック家族とその敵について
----- これから婚姻の秘蹟によって
結ばれようとする兄弟姉妹に -----
(2)婚姻の目的
「婚姻の主要な目的は、子女の出産と教育である」(カトリック教会法典1013条)
婚姻の目的について、ロマノ・アメリオはこう書いている。
「イエズスは、婚姻が存在する理由として、子孫を出産する望みを挙げている。イエズスは言う。「復活の時の人間は、めとりもせず、嫁ぎもせず、天使と同じようなものになる。」福音のこの箇所において、出産と生命は、この地上の現実という過ぎ去る世界のこととして捉えられている。死すべき命が終わるとき、出産も終わる。そして出産が終わるとき婚姻も終わる。」(Iota Umum, Sarto House, 1996, p.661)
ピオ12世教皇は、婚姻の主要な目的を次のように明確に述べている。
「これ(=婚姻の主要な目的)はすべての婚姻にとって、たとえその婚姻で子供が生まれなかったとしても、同じである。それは丁度、たとえ目が、異常なケースで、その内部的なそして外部的な特別な要因によって決して視覚を得る状態になることが出来ないとしても、目が見るために存在し形作られると言われることと同様である。」
婚姻の副次的な目的は夫婦の相互の完成と成就である。レオ13世教皇の言葉を聞こう。
「夫と妻の生活がより良く、より幸せになるためである。これは多くのやり方で実現される。相互の援助によってお互いの重荷を軽くし合うこと、常なる忠実な愛、すべての所有物を共有すること、この秘蹟から流れ出る天の聖寵によって。」(Arcanum Divinae, 1880年)
婚姻の崇高な目標は、教会のために子供を、つまり「聖徒たちと同市民、天主の家族」(エフェゾ2:19)を産むこと、そして最終的には天国を諸聖人でいっぱいにすることである。この創造的な行為によって、男性と女性とに崇高な尊厳が提示されている。ピオ11世の言葉によれば、夫婦が子女を出産することによって「天主の全能の役務者」(Casti Connubii, 1930年)となる。
(続く)
今回は、以下に最近のニュースをお知らせします。
■ アメリカで、脳死状態3カ月の女性が女児出産
アメリカのバージニア州リッチモンドでは、5月から約3カ月脳死状態だった女性(26)が2日、同州アーリントンの病院で赤ちゃんを出産したそうです。脳死状態に陥ってから100日以上たって出産した別の例も報告されているそうです。
この出産のために、夫のジェイソンさんは、セールスマンの仕事をやめて妻に付き添ったそうです。集中治療室(ICU)の措置により、医療保険適用外の費用が1日約1500ドルかかるため、基金が設立されましたが、家族がテレビを通じて呼びかけたこともあって、40万ドル以上が集まり、日本からも寄せられたそうです。
( http://www.asahi.com/life/update/0803/004.html asahi.com:脳死状態3カ月の女性が女児出産 米の病院 (2005年08月03日) )
(脳死については、
FSSPX Japan: 【質問】脳死についてどう考えますか
延命処置については、
FSSPX Japan: 【質問】 強制的延命処置についてどう思いますか
などもご参照下さい。)
■ アメリカではブッシュ大統領在任期間中の中絶減少
さらにアメリカでは、ブッシュ大統領在任期間中の中絶減少しているそうです。
BPニュース(米・南部バプテスト連盟発行)によれば、ジョージ・W・ブッシュ米大統領の在任中、米国内の中絶件数が減少しているとの指摘が、フラー神学大学院神学部のグレン・スタッセン教授(キリスト教倫理学、神学博士)からなされたそうです。
スタッセン教授の今回の発表は、米政府が管轄する医療研究機関、アラン・グットマッハー研究所(AGI)による最新の調査結果に基づいたもので、スタッセン教授が昨年11月にした「ブッシュ大統領の在任中、中絶件数が増加している」とう主張に誤りがあったことを認めた格好となりました。
「AGIが先月19日に発表した研究結果によれば、ブッシュの大統領就任以降、中絶件数は現在に至るまで減少傾向にある。2000年の調査では米国人女性1000人中21.3%が中絶経験者であったのに対し、'01年には約1万件減の21.1%、'02年にはさらに1万件減の20.9%にまで減った。AGIによる調査は全米43州で実施された。一方、スタッセン教授の以前の発表は、1990年代初頭に16の州で行われた調査の結果をまとめたものだった。スタッセン教授が「ブッシュの政策は中絶抑止に貢献した」との主張を発表し、以前の発表を事実上撤回したのは先月25日のことだった。」
ただし、中絶件数の減少と大統領の政策との直接的な因果関係を証明する報告は現在のところ、どこからもないそうです。しかし中絶が減少したのはアメリカにとってよいニュースだと思います。 May God bless America!
( http://www.christiantoday.co.jp/template/news_view.htm?code=int&id=177 (クリスチャン トゥデイ: ブッシュ在任中、中絶件数が減少 (2005-06-03) )
■ アメリカの教育界のニュース
産経新聞(2005/08/04)によると、ブッシュ米大統領は「公立学校の授業で進化論以外の考えも示すべきだと発言、波紋を広げている。」そうです。それによると、ブッシュ大統領は1日に行われたテキサス州の地元紙とのインタビューで、聖書を厳格に解釈するキリスト教右派が熱心に説いている「インテリジェント・デザイン(ID)」に関する見解を聞かれたそうです。「インテリジェント・デザイン」とは、人間の複雑な細胞の構造は進化論だけでは説明できず、「高度な理知」の手が入ることにより初めて完成するという主張です。そこで、大統領は、学校のカリキュラムは連邦政府が決めることではないと述べる一方、「生徒たちは異なった考えに触れるべきかという問いの答えはイエスだ」と、公立学校でのインテリジェント・デザイン教育を全面的に支持する考えを示したそうです。これはアメリカにとってはよいニュースだと思います。
May God bless America!
■ 日本の学校教育のニュース その1
日本では、過激性教育が問題になっています。自民調査チームが公表したところによると、全国から3500事例も、異常な「教育」が指摘されています。
それによると、小学一年生に一人ひとりに鏡を持たせて自分の性器を見せる授業、幼稚園(原文ノママ!)で男女の性器の絵を見せ、先生の後に続けて園児に名称を言わせる、などを始め、「マニラの eそよ風」にはとても引用できない過激で子供の発達段階を無視した教育が行われています。
( http://www.sankei.co.jp/databox/kyoiku/etc/050715-2etc.html 産業経済新聞社: 過激性教育 全国から3500事例 自民調査チームが公表 (2005.07.15) )
私たちは、このような公教育での性教育を深く憂慮し抗議の声を挙げます。
このまま日本の公教育で、でたらめを好き勝手にさせていたらとんでもないことになってしまいます。
私たちはこう思います。過激な性教育によって、日本の将来を担う青少年と幼子たちに、自然の秩序をひっくり返そうとする人間を作り続ける日本の学校教育。大切な子供達には、貞潔と忠誠、命が聖なることを教えるべきではないでしょうか。それよりも、人間にはもっと美しくて高貴なこと、善良、忠誠、献身的奉仕、自己犠牲心、誠実、貞潔、純潔などがあることを子供達に伝えるべきではないでしょうか。
日本のカトリック教会は、このような「罪を教え、自然に反し、罪や恥ずべきことを、羞恥心無く堂々と犯すことを教えている異常な教育」についてこそ反対の声を挙げるべきではないでしょうか。
主よ、我らを憐れみ給え!
イエズスの至聖なる聖心よ、日本の青少年を憐れみ給え!
童貞聖マリアよ、我らのために祈り給え!
■ 「全国で展開される過激な性教育ジェンダーフリー教育の実態」を一部だけ引用します。
自民党が公表した主な事例 平成17年(2005)7月21日 「過激な性教育・ジェンダーフリー教育実態調査プロジェクトチーム」(座長・安倍晋三自民党幹事長代理)に全国から寄せられた過激な性教育の主な事例は次のとおり。
○ 幼稚園で男性性器や女性性器の絵を見せて、園児に部位の名称を先生の後に続けて言わせていたとのこと。(札幌市)
○ 中学生の校門で、PTAを名乗る父兄から、ピルを薦める小冊子とコンドームがセットで配られた。(北海道)
○ 中1~中3。自治医科大の産婦人科による性教育。コンドームを付けるタイミングなど具体的な指導あり。性に対し面白おかしく話し「自分は経験ない」と言いながら肛門に挿入する話など話すので親は憤りを感じた。(宇都宮市)
○ 小学校に、再三高学年が同じ教室で着替え(体育時)させるのをやめさせて欲しいと要望を出したが、完全無視。校長に直訴したが、不機嫌に拒否。6年生の学年主任の女教師は、男女一緒に着替えることを推奨した上、「自分も一緒に着替えることがある」と発言。やめて欲しいと言ったところ、異常なほどヒステリックに怒った。(埼玉県越谷市)
○ 出産ビデオを観ていた。男女は好きであったら一緒になっていいとか。子供達は気持ち悪いと言ったがしっかり観るように言われた。(千葉市)
○ 中3の保健体育の本に「体ほぐし運動」というのがあって男女の体をくっつけて寝る写真が載っている。背中を叩いたりほぐしたりはまだいいとしても体全身を男女がくっつけることが体ほぐしなのか。教科書はいい事も書かれているがコンドームを使えば大丈夫と勧めている内容、図入りは危険だと思う。(千葉県佐倉市)
○ 男女混合の組体操で男の上に女が乗ったり、男女交互に並んで体を倒す波(異性の股間に頭を倒します)をしていました。(東京都大田区)
○ 静岡市の中学校に転任になった教師が、3年生にコンドームの使い方を教えることになったが、疑問だと苦悩していた。(静岡県)
○ 小学校はトイレも一緒です。高学年になると女の子は学校でトイレに行かず、我慢して家でしています。(静岡県)
○ 小学生か中学生の頃、モザイクなしの出産ビデオを見せられました。(山口県下関市)
○ 子供を幼稚園に通わせていますが、身体検査、水泳の着替え等、同教室で裸になって着替えている状況に驚きました。子供たちは恥ずかしいと言いながらも抵抗できない状況でした。(愛媛県)
○ 川崎市立小学校5年生には学校を通じて「こんな子いるよね」という男女共同参画のパンフレットが配布されるが「専業主夫」「女の子が家事をするのはおかしい」「混合騎馬戦」などが登場する。また父兄懇談会の場で「参画法や条例ができたのになぜスカートを固定するのか」と校長を突き上げる一部フェミニストもいるのが実状だ。(川崎市)
○ 大分市では小学校1年生から自分を知るということで一人一人鏡を持たせて性器を見せる授業をしている。不審者が触る場所がどういう場所か知る為と言うが本当に必要なことか。「きんたまのはなし」という紙芝居を用いると指導案に記入がある。また親が中学1年生の授業を体験する地区研修会では思春期の性についての分科会があったが「結婚しなくてもいいんですよ。自由です。自分が生きるのだから自分で決めていい」との説明もあった。(大分市)
■ 日本での学校教育 その2
残念ながら、カトリック教会は過激な性教育については問題視していないかのようです。
しかしそれと対照的に「正義と平和協議会」が中心となって、扶桑社の「新しい歴史教科書をつくる会」の教科書の反対運動に躍起になっています。
日本カトリック 正義と平和協議会
「カトリック正義と平和協議会」の主張することは、日教組(旧社会党系)と全教(共産党系)と一緒です。つまり、この教科書に反対するために、凄まじい電話・ファックス攻勢、脅迫、妨害活動によって圧力をかけて「言論テロ」をすることを呼びかけているのではないでしょうか。何という悪魔的な方針の間違いでしょうか!
あるいは、大阪教区では、今年6月25日に「子どもたちに渡すな!あぶない教科書」大阪集会の参加することを呼びかけていましたし、「つくる会」教科書不採択への協力要請が、「アジアネット」から来ていた、ということで抗議行動を起こすように、求めています。
( http://www.osaka.catholic.jp/sinapis/tukurukai-fusaitakuyousei.html カトリック大阪大司教区: 日本正平協より 「つくる会」教科書不採択への協力要請
あるいは、
http://www.osaka.catholic.jp/sinapis/kyoukasyo-kougi.html カトリック大阪大司教区: 日本カトリック正義と平和協議会から「つくる会教科書」採択状況と抗議行動について)
「アジアネット」とは、新しい歴史教科書をつくる会(「つくる会」)の教科書による「歴史歪曲教科書問題」(原文のママ)を許さない、憎しみと闘争心で「アジアの民衆との連帯」のために戦うという共産党やその他社会主義の政党や団体の主張していることと同じことを主張する団体です。
( http://www.jca.apc.org/asia-net/index.shtml 歴史教育アジアネットワークJAPAN )
私たちを本当の意味で「連帯」してくれるのは、私たちの主イエズス・キリストなしには有り得ません。私たちはそう確信しています。しかし超自然は、自然を破壊せず、それを完成させるのですから、私たちは、むしろ韓国・北朝鮮・中国が、反日教育を即座に停止することを求め、それを願います。そうしたら、ようやく「アジアの民衆との連帯」の環境が整うようになるのではないでしょうか。その日が来る日を祈ります。私たちの交流が、私たちの主イエズス・キリストへの信仰と愛徳と真理とに基づいたとき、初めて、本当の意味の兄弟愛が育まれると信じます。願わくは、その日が早く来ますように! 主が日本に、韓国に、北朝鮮、台湾、中国、ベトナム、その他のアジアの諸国を憐れんで下さいますように!
■ 「九条の会」とカトリック教会
また、7月22日には、大阪教区のカトリック北野教会では「大阪宗教者九条の会」主催で「おおさか9条の会事務局」の澤野義一氏を講師に、「憲法9条に関する講演会」がありました。
「九条の会」活動は日本共産党が全国で展開しており、日本共産党の指導のもとで、全国の宗教者に「九条の会」アピールへの賛同を呼びかける「宗教者九条の和」も出来ています。その「宗教者九条の和」の呼びかけ人には、カトリック高位聖職者からは13名も名前が連なっています。
白柳誠一(カトリック 枢機卿)
池長 潤 (カトリック 大阪教区・大司教)
大倉一美(カトリック 東京教区・司祭)
大塚喜直(カトリック 京都教区・司教)
岡田武夫(カトリック 東京教区・大司教)
菊地 功 (カトリック 新潟教区・司教)
高見三明(カトリック 長崎教区・大司教)
谷 大二 (カトリック 埼玉教区・司教)
野村純一(カトリック 名古屋教区・司教)
松浦悟郎(カトリック 大阪教区・補佐司教)[呼びかけ人世話役]
三末篤實(カトリック 広島教区・司教)
宮原良治(カトリック 大分教区・司教)
溝部 脩 (カトリック 高松教区・司教)[?]
日本共産党 しんぶん赤旗: 宗教者九条の和 呼びかけ人
http://osaka.catholic.jp/sinapis/syuukyousya-9jyonowa.html カトリック大阪大司教区: 日本正平協より「宗教者九条の和」のお知らせ
そしてこの「宗教者九条の和」事務所は、東京都江東区潮見の「日本カトリック会館」にあります。また、松浦悟郎補佐司教の主導する“ピース9”もこの一環のうちにあるようです。
(これについては
やまて喫茶室: 思考の断片(18) 正平協全国集会と九条の会
もご参考に)
カトリック教会の聖職者達は、「カトリック」という名前を公式に使っています。「キリスト」という名前で「天主の子羊」を身につけています。子羊の衣を着て子羊のように見えます。しかし、残念ながら、その口から出る内容は、キリストの無い「平和」、キリストのいない「歴史」、キリストのない「人間との連帯」ではないでしょうか。致命傷を受けて死んだように見えたけれど、実は全世界で権力を握るために活動している共産主義を唱えているのではないでしょうか。
私たちは、黙示録を思い出します。
「私は他の獣が地から上るのを見た。それは子羊のような二本の角を持っていたが、竜のように話していた。またそれは先の獣に仕えて、あらゆるところにその覇権の地を定め、致命傷を治された先の獣を礼拝するため、地とそこに住む者を連れてきた。」(黙示録13:11-12)
私たちは「九条の会」と一切関係がありません! 私たちは真の天主であるイエズス・キリストの福音を信じます。私たちは天主教の信者です。
私たちはイエズス・キリストのいない「日本国憲法」を福音であるかのように信じる「民主教」信者ではありません。イエズス・キリストのいない「平和」を創ろうという試みこそが、天主に対する戦争であり、本当に悲惨な戦争に他ならないからです。
「人々が平和だ!無事だ!と言うとき、滅びは突如として彼らの上に下る。」(テサロニケ5:3)
主よ、我らを憐れみ給え!
いとも甘美なるイエズスの聖心よ、我らを憐れみ給え!
至聖なるイエズスの聖心よ、御国の来たらんことを!
聖母の汚れ無き御心よ、我らのために祈り給え!
文責:トマス小野田圭志神父(聖ピオ十世会司祭)