第160号 2003/07/05 証聖者、聖アントニオ・マリア・ザカリアの祝日
アヴェ・マリア! ■ 質問です 「 (1)' カトリック信者が、未信者とであっても、司祭の許可を得て、カトリック教会で、挙式したのなら、これは有効な結婚です」という内容は同棲扱いと聴いておりましたが? 正式な?カトリックにおける結婚は、結婚前であろうと結婚後であろうと、双方が信者となって、はじめて有効である。したがって、片方が、結果的に信者にならなければ、その婚姻は同棲として扱われる、のではないですか? (第158号参照) ■ お答えします 「有効な結婚」と「秘跡としての婚姻(=婚姻の秘跡)」と区別しなければなりません。 A カトリック信者同士の教会結婚=婚姻の秘跡 「正式な」カトリックの結婚は、「秘跡の婚姻」ですから、両者が信者となって初めて秘跡としての婚姻(婚姻の秘跡)が成立します。カトリック教会は、カトリック信者が未信者と結婚することを固く禁じています。 B カトリック信者と未信者との結婚 しかし、ある特別な事情があって、カトリック教会が特別に許すならば、カトリック信者は未信者と結婚をすることが出来ます。そしてそれは、たとえ「秘跡」ではなくても、有効な結婚で、同棲ではありません。従って、この関係は罪ではなく、生まれてくる子供も、正当な子供です。 B1 カトリック信者と未信者とが教会の外で「結婚」をした カトリック教会の外で、教会以外のところで、「結婚」をしている場合、これは天主によっては、正式な結婚としては認められていません。 もしもカトリック信者が、カトリック教会で結婚していなかったとすると、天主の前では婚姻関係ではありません。同棲状態で、罪の関係です。ですから、カトリック信者と未信者の両者とも正式の婚姻関係を結ぶことが出来ます。 B2 カトリック信者と未信者とがカトリック教会で結婚式をした カトリック信者が未信者と、カトリック教会の特別の許しを持って、教会において正式な結婚をしている場合、この結婚は、有効で合法的な結婚です。カトリック信者にとっては、この結婚を解消させることはできません。 以上の説明で、明らかになりましたでしょうか? ●「マニラの eそよ風」158号の「ペトロの特権」について追加説明をします。 「ペトロの特権で注意して頂きたいことは、洗礼を受けている配偶者との結婚の時には自分は未信者であったが、「離婚」の後、自分は信者となった、と言うことです。そして離婚(別居)後に新たに信仰を得た以前の未信者(自分)が、この特権を享受することが出来ます。結婚の時、既に洗礼を受けていた信者には、このような特権はありません」 従って、信徒と結婚したあとで、未信者だった配偶者がまだ結婚生活中に洗礼を受けて、夫婦ともに信者として過ごしたあとでは、別れたくなったといっても、あとから信者になった側も、もともと信者の側も、両方とも、別の人とは結婚できません。 ■■ 例えばのケース ■■ よく理解することができるように、例を挙げて説明してみます。(以下のケースは全くの架空の内容であり、現実といかなる関係もありません。) たとえば、こんな例を挙げてみます。 未信者花子はカトリック信者の太郎と結婚した。花子は学生時代からキリスト教式のチャペルでも結婚式を夢見ていたので、太郎と日本のある結婚式で有名なカトリック教会で結婚式を執り行うことに賛成し、一緒に教会に足を運び、神父様からの結婚講座を受け、結婚にこぎ着けた。 さて、カトリック信者の太郎は、「御出現」といってメッセージに凝っており、X県にある自称幻視者(未信者で洗礼を受けていない、独身女性のY)を中心とするいかがわしいカルト団体にドップリと浸かってしまった。太郎は、ますます狂信的になっており、ついに、10年の結婚生活後、花子とその間に生まれた3人の子供をおいて自宅を飛び出して、自称幻視者の方に引っ越してしまった。太郎から一緒にX県に移ろうと誘われたが、彼らの話を聞けば聞くほど、インチキ臭く、泣きながら花子は断ることにした。一方、太郎は一人で借家を離れて、X県に引っ越してしまった。 太郎は、最初は、X県から花子に仕送りをしていたが、収入がないらしく、それも程なく打ち切れた。そこで花子は、太郎の帰りを待ちつつ、3人の子供を連れて自分の実家に戻り親元で職業生活を始めた。 こうして6年ほど経ったが、太郎の側になんらの改善の様子が見られない。最近の便りによると、そこのグループのリーダーYはつい最近、カトリックの洗礼を受けて信者になったそうであるが、自称幻視は続いているらしく、最近は夢の中でこのようなお告げを受けたと主張しているらしい。「天は、『ペトロの特権』を使ってYと太郎とが結婚することを望んでいる、そうすれば、Yと太郎との間に聖なる子供が宿るだろう。」 そして、太郎は単純にこの「お告げ」を信じて、Yとの結婚を望んでいるらしい! 花子は、仕方なく、民法上の離婚の手続きをし、太郎もそれに同意した。その後、しばらくして、同じ職場の秀樹と親しくなっていった。秀樹もカトリック信者と言うので、最初は、また御出現やメッセージだのとの話があるのではないかと警戒していたが、秀樹からは、その話はさっぱり無い。独身の責任感のある理性的な男性で、東京で聖伝のミサに与っているのだという。花子は、秀樹と一緒に聖伝のミサに与り、そこの神父様のお説教を聞く内に、本当のカトリックとは何かが分かってきた。そこで、神父様から公教要理の勉強を教えてもらい、1年後には、3人の子供と共に聖伝の司祭から洗礼を受けた。 一番喜んだのは秀樹であった。花子は、3人の子供をつれて一生一人でいるつもりであったが、この年下の秀樹が花子に求婚さえしてきた。花子は、秀樹と結婚できるのだろうか? また、太郎は「ペトロの特権」をつかって、Yと結婚で来るのだろうか。 【答えは、花子はペトロの特権を使えば、秀樹との結婚は不可能ではない、太郎にはそのような特権はない、従ってYは太郎と結婚することができない、です。】 ■■ では、こんな場合は? ■■ では、こんな場合は? (以下のケースは全くの架空の内容であり、現実といかなる関係もありません。) 未信者の花子は、やはり未信者の太郎と結婚した。花子は学生時代からキリスト教式のチャペルでも結婚式を夢見ていたので、太郎と日本のあるプロテスタント教会で結婚式を執り行うことに賛成し、一緒に教会に足を運び、結婚にこぎ着けた。9年間の結婚生活の後、3人の子供が生まれた。しかし花子は、カルトに凝ってしまい、日本のH県にある、或る女性を中心とするいかがわしいカルト・メッセージ団体にドップリと浸かっていた。花子は、ますます狂信的になっており、ついに、9年の結婚生活後、太郎とその間に生まれた3人の子供をおいて自宅を飛び出して、自称幻視者の方に引っ越してしまった。太郎は、花子から一緒にH県に移ろうと誘われたが、彼らの話を聞けば聞くほど、インチキ臭く、太郎は断ることにした。花子は一人で借家を離れて、H県に引っ越してしまった。 花子は、最初は、太郎によく連絡をしていたが、それも程なく打ち切れた。太郎は、花子の帰りを待ちつつ、3人の子供を連れて自分の実家に戻り親元で生活を始めた。何故、花子からの連絡が打ち切られたのか不思議に思った太郎が調べてみると、花子は精神に異常をきたし、ついに強制的にH県にある保護施設に収容されてしまったことが判明した。こうして5年ほど経ったが、花子の側になんらの改善の様子が見られない。医者の話によると、今後も改善の見込みは全くないという。 太郎は、仕方なく、民法上の離婚の手続きをし、それが受け入れられた。その後、しばらくして、太郎は、同じ職場の祐子と親しくなっていった。祐子はプロテスタント信者の女性でまだ独身である。二人は結婚することになり、15年ほど共に幸せに暮らし、5人の子供を得た。 ところで、太郎と祐子は、インターネットで聖伝のミサについて知り、興味を覚えた。太郎と祐子とは子供たちと共に、最初は興味本位で一緒に聖伝のミサに与り、そこの神父様のお説教を聞く内に、カトリックとは何かが分かってきた。そこで、神父様から公教要理の勉強を教えてもらい、1年後には、子供たちと共に聖伝の司祭から、家族一同でカトリックに改宗したいと神父様に相談した。 カトリック教会は、彼らに洗礼を授けることが出来たとしても、既に結婚して離婚したこの太郎と、祐子との結婚を正当な結婚として認めることが出来るのだろうか? この答えは、別の機会にお知らせします。 トマス小野田圭志 (聖ピオ十世会司祭) |