マニラのeそよ風

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第120号 2003/04/23 御復活の水曜日


アヴェ・マリア!

兄弟の皆様、
 イラクでの戦争のことを読み聞きし、もう一つ別の戦争のことをどうしても思わざるを得ませんでした。

 今年3月にアメリカが行ったイラク戦争について、マスメディアは連日大きな報道をしました。2003年4月12日付けの産経新聞によると、イラク戦争での死者は、イラク民間人1140-1376人、イラク兵不明、米兵105人、英兵30人、メディア関係者12人だそうです。多くの方が亡くなったと伝えられ、遺憾に思います。心からこれらの方のご冥福を祈ります。1991年の湾岸戦争では、約3000人の死者が出たそうです。今では、関心は北朝鮮に移りつつあるようです。特に日本は北朝鮮に対して、憂慮しつつ見守っています。

 ところで、イラク戦争での犠牲者よりも、北朝鮮の日本人拉致よりも、もっと多くの罪のない民間人が、しかも日本人が、しかも、未来のある日本人の子どもたちが全く不正な戦争によって毎日多く殺されています。しかも、戦争を放棄したはずの日本人は、武器を持たない子供たちへ、しかも自国民の子どもたちに対して容赦ない戦いを挑んでいます。この戦争は1970年代に始まり、30年以上続いていますが、まだ終わってはいません。そしてマスメディアは、この戦争に対して大きな沈黙を守っています。

 読売新聞(2002年8月8日)によると、2001年の1年間に34万1588名の日本人の子どもが日本人の手によって、つまり、人工妊娠中絶によって殺されました。2001年は一日平均すると【一ヶ月でも一週間でもありません、一日、つまり24時間のことです!】936名もの日本人の子どもが殺され続けたのです。この虐殺は、今でも毎日、日本各地で引き続き行われています。

 イラク戦争の時には、世界中で反対運動が巻き起こりました。米国大使館の前で反戦を訴えた方もあり、「人間の盾」として自分の命の危険を冒してまでもイラクに留まった人もいました。「私たちよりイラクの人たちのことを心配してほしい」と断食と座り込みをした高齢の女性もいたそうです。しかし、イラク戦争よりもひどい胎児に対する戦争に対しては、反対の声を挙げる人はほとんどありません。お母さんの胎内には、私たちと同じ人間が生きています。ごく普通に生きている人間をむごたらしく殺す戦争を絶対に止めなければなりません。外国での戦争に対してとった抗議を見ると、本来なら、私たちは「人間の盾」となって病院に乗り組んで赤ちゃんの命を救おうとすべきなのではないでしょうか? 国会の前で連日座り込みと断食をしなければならないのではないでしょうか?

 胎児への戦争を別の角度から比較してみましょう。北朝鮮は日本の安全保障にとって大きな問題です。「悪の枢軸」で「ならず者国家」なのかも知れません。私たちは憂慮しています。北朝鮮は核開発施設を再稼働し、国際原子力機関の視察団を国外追放し、ノドン100基で日本を狙って実戦配備し、ポテドンを開発し、対艦ミサイルの発射を繰り返しました。日本人は北朝鮮の挑発に恐れを感じています。

 ところで、日本人が北朝鮮に対して感じると同じく、日本に宿された子どもたちも、自分たちを殺すことを許している日本国に対して恐れを感じているのではないでしょうか?

 さらに日本は、日米安全保障条約やアメリカのアーミテージ国務副長官の「日本に対する攻撃は、アメリカに対する攻撃と見なす」という言葉を北朝鮮に対する抑止力になることを願っています。

 それならば、赤ちゃんたちにとって一体何が抑止力となるのでしょうか? 日本国憲法でしょうか? いいえ。憲法は全く抑止力になっていません。世界人権宣言でしょうか? いいえ。フランス革命によって確立された人権思想が世界に広まれば広まるほど、人々は堕胎を合法化しているからです。人間がまことの天主を忘れて「人間の尊厳だ!」と叫べば叫ぶほど、ますます乱暴になり、凶暴になり、戦争を繰り返すようになっているからです。

 では、赤ちゃんは何を頼りにしたらよいのでしょうか? 天主です。日本がアメリカの軍事力に頼るように、赤ちゃんたちは天主の力に頼るでしょう。天主の尊厳を人間が守ることです。

 天主は言いました。「汝、殺すなかれ。」また天主は私たちに言うでしょう。「罪無き胎児に対する攻撃は、私、天主に対する攻撃と見なす」と。天主は、罪無き子どもに対して不正な戦争を続けている日本を「悪の枢軸」「ならず者国家」と決めつけて、制裁をなさるでしょう。天主は日本が、いえ世界がおこなっている胎児に対するテロにたいする戦争を挑むでしょう。

 その意味で、エイズがそうであるように、中国で流行している重症急性呼吸器症候群(SARS)は、私たちにとっての警告かも知れません。現在、関東の原子力発電所14基は、全て作動を中止しているそうです。この夏にはこのままでは電力が不足することが予測されているそうです。これも警告なのかも知れません。

 私たちの祖国で原子力発電所からの放射能漏れという惨事があってはならないと思います。しかし、私たちは非常に弱い存在であり、天主に依存しているということを忘れる場合には、天主は私たちにそのことを思い出させようとするのではないでしょうか。天主は、ましてや思い上がっている人類に対して徹底的な戦いを挑むのではないでしょうか? 私たちが膝をかがめ祈るようになり、天主の権利を認め、天主に従順になるまで。

 日本で、そして世界中で、罪もない胎児に対するテロ、堕胎という胎児に対する不正な戦争を止め、永久完全に放棄する日が来るのを祈り願いましょう。

トマス小野田圭志 (聖ピオ十世会司祭)