マニラのeそよ風

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第82号 2003/02/15 聖母の土曜日


アヴェ・マリア!

 さて、今年の2月には、医学博士であるジャン・ピエール・ディケス博士(Dr Jean-Pierre Dickes)を日本にお招きし、大阪と東京で最新の医学問題についての講演会を開く予定でしたが、ディケス博士は昨年、入院手術し、まだ旅行をするほど体力が回復されておられないとのことで、今回は残念ながら、延期になりました。皆様のご理解をお願いいたします。

 『聖ピオ10世会の司祭の施す告解及び婚姻の秘跡の有効性について――カトリック教会法の研究――』 ですが、今回は、意図的な行為によってカトリック教会を離れたカトリック信者が教会法上の婚姻形式から免除されるというカトリック新教会法典の新しい規定を考察します。今回も、私たちは、この教会法典をただ、納得させるためのad hominem議論として使うだけです。聖ピオ十世会を離教だとする人々は、まさにそのことによって、聖ピオ十世会の婚姻の有効性を認めることになるのです。では、次をお読み下さい。

 天主様の祝福が豊かにありますように!

トマス小野田圭志 (聖ピオ十世会司祭)




聖ピオ10世会の司祭の施す告解及び婚姻の秘跡の有効性について
――カトリック教会法の研究――
ラモン・アングレス神父(聖ピオ十世会司祭)著
トマス小野田圭志(聖ピオ十世会司祭)編・訳


8. 意図的な行為によってカトリック教会を離れた
カトリック信者が教会法上の婚姻形式から
免除されるというカトリック新教会法典の新しい規定


8.1. 意図的な行為によってカトリック教会を離れたカトリック信者は、教会法上の婚姻形式から免除されるという次のようなカトリック新教会法典の新しい規定があります。

Statuta superius forma servanda est, si saltem alterutra pars matrimonium contrahentium in Ecclesia catholica baptizata vel in eandem recepta sit neque actu formali ab ea defecerit, salvis praescriptis can. 1127 #2. (New Code Canon 1117)

 カトリック新教会法1117条 以上に定められた方式が遵守されなければならないのは、婚姻契約締結当事者の少なくとも一方がカトリック教会で受洗したか又はカトリック教会に受け入れられ、かつ正式の行為によってカトリック教会から離脱していない場合である。ただし、第1127条第2項の規定の適用を妨げない。


8.2. 概念

 以前のカトリック教会法典において、そして1948年8月1日付のNe Temereという自発教令によるカトリック教会法1099条の改正の後、婚姻の秘跡の教会法上の形式を守る義務は、カトリック教会において受けた洗礼の秘跡とカトリックの教えに改心したという事実によって決定されました。非カトリック者との婚姻に関して別の改正がなされましたが、それは本質的に、聖なる役務者から婚姻が祝福される限り、カトリック者と東方の非カトリックの洗礼を受けた者との間の婚姻の件に関して、婚姻の形式を守る義務を免除したことです。

 カトリック新教会法典1117条で導入された革新的な点は、カトリック教会のなかで洗礼を受けたもの、あるいはカトリックに改心したもので、その後に正式の行為によって(actu formali)カトリック教会を離脱した者は、婚姻形式から免除されているとしたことです。

 カトリック新教会法1117条 以上に定められた方式が遵守されなければならないのは、婚姻契約締結当事者の少なくとも一方がカトリック教会で受洗したか又はカトリック教会に受け入れられ、かつ正式の行為によってカトリック教会から離脱していない場合である。ただし、第1127条第2項の規定の適用を妨げない。

 1983年以降、この正式の行為によって(actu formali)とは何の意味なのかということが解釈され、ナバラ大学のカトリック教会法教授たちをここで引用すれば十分でしょう。前掲書680ページ以下を参照してください。

De los Trabajos Preparatorios del Nuevo Codigo (cfr. Communicationes, 8, 1976, pp. 54-56; y 10, 1978, pp. 96-98) se deduce que la separacion formal no es siempre equivalente a acto publico o notorio de apartamiento de la fe catolica. Asi, el termino PUBLICO tanto puede incluir una defeccion normal como una defeccion virtual de la fe catolica; es decir, tanto una separacion seguida de adscripcion a otra confesion, como una vida notoriamente contrastante con la doctrina catolica, pero sin formal acto de abandono de la Iglesia catolica... Sera necesario un hecho publico que implique, al tiempo, un formal apartamiento de la Iglesia catolica: adscripcion a una confesion acatolica, declaracion ante el parroco hecha por escrito, etc.; es decir, un acto juridico externo del que inequivocamente se deduzca el formal apartamiento de la Iglesia catolica.

 ここで、著者たちは、正式の行為によって (actu formali) カトリック教会を離脱するために法治的な価値のある何らかの外的な行為が必要であるとしています。つまり明確にあいまいさを残さずにカトリック信仰を放棄したということを表すことです。例えば、非カトリックの新興宗教(セクト)に属する(adscripcion a una confesion acatolica)、などです。

 したがって、婚姻しようとする両者が正式の行為によってカトリック教会を離れた場合、カトリック新教会法典は彼らをして婚姻の通常の形式を守る義務から免除しています。これは、つまり、2名の証人の前で婚姻の約束の交換をするだけで有効な婚姻が成立するということを意味します。


8.3. 聖ピオ10世会に適応する

 もちろん、私達はこのような議論を持って聖ピオ十世会のチャペルにおける婚姻の有効性や合法性を正当化しようとするつもりはありません。何故なら、そのような議論はまず、聖ピオ十世会がカトリック教会の外にいるということを前提としているからです。私達はそれどころか、第2バチカン公会議後の教会が苦しむカルワリオの受難において、カトリック教会に奉仕を捧げているのです。

 ただし、ここでもまた、議論のために、そして教会当局の人々の論が突き詰めるとおろかさに至ってしまうということを示すために、もしもという仮定のもとでこのカトリック新教会法典を適応してみたいと思います。

 もしも、仮に聖ピオ十世会が離教グループだったとします。聖ピオ十世会が離教グループであるとされえる理由となるものは、唯一だけあります。それは、第2バチカン公会議後の霊的大崩壊によって原因された現在の緊急事態においてカトリック司祭職を救うために「生き残り作戦」続けるために、1988年6月30日に、マルセル・ルフェーブル大司教とアントニオ・デ・マストロ・マイヤール司教が司教聖別をしましたが、この司教聖別を受け入れて擁護するということが、「離教」であったと言われています。

 私達は、「破門」が無効であったこと、また「離教」は一度も起こらなかったことを明らかに証明することができます。私達はハワイの司教が聖ピオ十世会の聖堂に聖伝のミサに与りに来ているグループに対して出した破門を教義聖省が無効とした判件を上げることもできます。この教義聖省長官であるラッチンガー枢機卿は、聖ピオ十世会が離教グループであるとする根拠は全く無いといっています。

 しかし、いま、私達が仮定しようとすることは事実とは正反対の事柄です。ここで今しばらく、聖ピオ十世会を離教的であると呼んでいる人々の議論を追ってみることにしましょう。

 もしも、聖ピオ十世会の信者が1988年の司教聖別を指示したがために離教徒となったとします。すると、カトリック新教会法典1117条は、婚姻の通常形式から彼らを免除させています。したがって、聖ピオ十世会のチャペルでの婚姻は完璧に有効であり、また両者がカトリックの洗礼を受けているので、その婚姻は秘跡となります。

 聖ピオ十世会を離教だとする人々は、まさにそのことによって、聖ピオ十世会の婚姻の有効性を認めることになるのです。

(つづく)