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第80号 2003/01/21 聖アグネスの祝日

聖アグネス、ジュセペ・デ・リベラ(1641)
聖アグネス、ジュセペ・デ・リベラ(1641)

アヴェ・マリア!

 『聖ピオ10世会の司祭の施す告解及び婚姻の秘跡の有効性について――カトリック教会法の研究――』 今回は、破門された司祭によって執行された秘跡と準秘跡についてです。私たちは、この教会法典をただ、納得させるためのad hominem議論として使うだけです。聖ピオ10世会に反対する人々が何を考えているかよく分かっているので、聖ピオ10世会の法的地位に関する彼らの立場が論理的に何を意味するのかということを、結論付けさせるためです。では、次をお読み下さい。

 天主様の祝福が豊かにありますように!

トマス小野田圭志 (聖ピオ十世会司祭)




聖ピオ10世会の司祭の施す告解及び婚姻の秘跡の有効性について
――カトリック教会法の研究――
ラモン・アングレス神父(聖ピオ十世会司祭)著
トマス小野田圭志(聖ピオ十世会司祭)編・訳


6. 破門された司祭によって執行された秘跡と準秘跡


6.1. 破門された司祭によって執行された秘跡と準秘跡に関する教会法典

#2. Fideles, salvo praescripto #3, possunt ex qualibet iusta causa ab excommunicato Sacramenta et Sacramentalia petere, maxime si alii ministri desint, et tunc excommunicatus requisitus potest eadem ministrare neque ulla tenetur obligatione causam a requirente percontandi.

#3. Sed ab excommunicatis vitandis necnon ab aliis excommunicatis, postquam intercessit sententia condemnatoria aut declaratoria, fideles in solo mortis periculo possunt petere tum absolutionem sacramentalem ad normam can. 882, 2252, tum etiam, si alii desint ministri, cetera Sacramenta et Sacramentalia. (Canon 2261)

カトリック教会法2261条 
(2) 信者は何らかの正当な理由があるとき、特に他の執行者がない場合には、破門者に秘蹟および準秘蹟の執行を請求することができる。ただし、第3項の規定の適用を妨げない。この場合、破門者は、請求の理由を調査する義務を負うことなく、それを授与することができる。
(3) しかし、除去される破門者ならびに有罪判決、または宣言判決を受けたその他の破門者に対しては、信者は、死の危険にひんするときにのみ第882条、第2252条の規定にしたがって、秘蹟上の赦免を請求することができる。この場合他の執行者がないときは、その他の秘蹟、および準秘蹟の授与をも請求することができる。

Si censura vetet celebrare sacramenta vel sacramentalia vel ponere actum regiminis, vetitum suspenditur, quoties id necessarium sit ad consulendum fidelibus in mortis periculo constitutis; quod si censura latae sententiae non sit declarata, vetitum praeterea suspenditur, quoties fidelis petit sacramentum vel sacramentale vel actum regiminis; id autem petere ex qualibet iusta causa licet. (New Code Canon 1335)

カトリック新教会法1335条
 懲戒罰が秘跡若しくは準秘跡の執行、又は統治行為を禁止する場合、死の危険にある信者の世話をするために必要なときはそのつど、禁止事項は一時中断される。判事的懲戒罰が宣告されていない場合は、禁止事項は更に、信者が秘跡及び準秘跡又は統治行為を願うときはそのつど、一時中断される。信者は、正当な理由の存する場合、いかなる場合でもそれを願うことができる。


6.2. 概念

 この教会法の条項は聖ピオ10世会に反対しようとする人々に対して最も強固な議論を提示します。そして、この条項は聖にして母なるカトリック教会の母親らしい気遣いを明らかにしています。教会は常にその子どもである信者の霊的善を求めているのです。

 この条項の意味は全く明らかです。長い説明はいりません。どのような理由であれ信者は何らかの正当な理由があるとき、破門者に秘蹟および準秘蹟の裁治権の行為(統治行為)でさえも、執行を請求することができるのです。司祭は有効に、かつほとんど常に適法に、この行為を執行できます。

 このように信者に譲歩するのは、カトリック教会法典682条にある教会法典上の一般原理の結果です。つまり、Laici ius habent recipiendi a clero, ad normam ecclesiasticae disciplinae, spiritualia bona et potissimum adiumenta ad salutem necessaria. 平信徒は、教会の規律の規定に従い、霊的善と特に救霊に必要な援助を、聖職者から受ける権利を持つということです。これに似たものは、カトリック新教会法典213条に謳われています。

 ここで語られている霊的善とは、通常の祈り、準秘跡、贖宥、教会での葬儀などのことです。救霊のために必要な手段とは、秘跡、特に手段として或いは主の命令によって救霊に必要なnecessitate medii vel praecepti秘跡です。

 救いのために必要な手段(特に秘跡)に関する天主の法によって、一部この権利は譲歩され、準秘跡や天主の命令によって必ずしも必要ではない秘跡に関しては、教会法典によっても一部譲歩されています。

 この研究を通して、ここでもまた、私たちは霊魂の救いは最高の法であるSalus animarum est suprema lexという教会の格言の適応を見いだします。この格言は、カトリック教会法典2261条によって教会法上の具体的現実となり、洗礼を受けたことにより、信者は自分の霊魂の善のために必要な全ての奉仕を受ける権利があるということ、また司祭たちは信者にそれを授ける義務を持つことを意味しています。

 教会法学者の専門書から引用して、私の説明を確証します。

 Garcia Barberena, Comentarios al Codigo de Derecho Canonico, 1964, IV, #406: 信者が自分の権利を使って秘跡を要求するとき、司祭が処罰を受けて秘跡の執行を停止処分になっていたとしても、それが緩和されます。破門された役務者は、求められるときそれらの例外的行為をするために処罰が一時停止し、適法的に秘跡や準秘跡を執行することが出来る。もし、役務者が成聖の状態にないときには、倫理神学の規則に従って聖性の状態にあらかじめ身を置く義務がある。この例外は、破門されたもののためではなく信者の利益のためにある。従って、正当な要求に応えるときにのみ、この行為は適法となる。破門されたものが信者の先を行って与えることは出来ない。もし、大目に見られている破門者が役務者である場合には、役務者は合理的に要求されるたびごと秘跡の執行が出来る。信者が善意で秘跡を求めるという事実だけで、この要求を正当化する充分な理由である。疑義と不安を取り除くために、立法者は、破門された役務者が、信者の請求には充分な理由があるか否かを調査する義務を負うことなく、それを授与することができる、としている。多くの著者は、この要求は暗黙のうちの要求であっても良いという。

Roberti, De Delictis et Poenis, 1944, #330: Confectio et ministratio sacramentorum et sacramentalium per excommunicatos generatim est valida. Sacramenta enim cum sint a Christo instituta, nequeunt poenis ecclesiasticis mutari. Sacramentalia dependent ab Ecclesia, sed Codex eadem non declarat invalida (c. 2261,1). Nihilominus confectio et ministratio sive sacramentirum sive sacramentalium prohibentur generatim excommunicatis, sed fideles possunt intra certos limites ea ab iisdem petere, quo in casu excommunicati generatim licite ministrant... Requisitio fidelium potest esse etiam implicita, e.g., si sacerdotem expectent ad audiendas confessiones, ad celebrandam Missam, ad impertiendam benedictionem, etc.

Prummer, Manuale Iuris Canonici, 1933, #571: Fideles enim possunt ex qualibet iusta causa ab excommunicato sacramenta et sacramentalia petere, maxime si alii ministri desunt, et tunc excommunicatus requisitus potest eadem administrare neque tenetur percontari causam a requirente. Excipiuntur tamen excommunicati vitandi et alii excommunicati post sententiam condemnatoriam aut declaratoriam. Ab his enim fideles in solo mortis periculo possunt petere tam absolutionem sacramentalem, quam etiam, si alius deest minister, cetera sacramenta.


6.3. 聖ピオ10世会に適応する

 私たちは、この教会法典をただ、納得させるためのad hominem議論として使うだけです。聖ピオ10世会に反対する人々が何を考えているかよく分かっているので、聖ピオ10世会の法的地位に関する彼らの立場が論理的に何を意味するのかということを、結論付けさせるためです。

 聖ピオ10世会は1970年11月1日、ロザンヌとジュネーブとフリブール教区の司教であるシャリエール司教によって、Pia Unioとして教会法に則って創立され、ローマの聖職者聖省の枢機卿長官によって1971年2月18日付けの書簡によって、公式に称賛され、不法に「廃止」させられたことは、私たちにとって、疑いがありません。パウロ6世がそのような「廃止」を有効にさせようとして取った行為は、教会法によるin forma specifica「廃止」の確認ではなかったので、教会法上「廃止」は無効のまま留まっています。聖ピオ10世会の「廃止」問題について、教会裁判所Signatura Apostolicaは裁判を拒否し、今でもそれは躓きであり、計り知れないほどの不正義です。

 聖ピオ10世会の創立初期数年の間に、まだ聖ピオ10世会が国際的な段階にまで発展するずっと以前に、ローマは聖ピオ10世会に様々な修道者を所属させる(incardinare)ことの許可をいくつも与えたことは、聖ピオ10世会が続けてその会員を所属させることが出来ることを許可していることであり、私たちの叙階式が完璧に適法であると、私たちは信じています。

 しかし、ここでは、単に議論上でのこととして、しばらくの間聖ピオ10世会の反対者たちの意見に大きく譲歩して見ることにします。そして、聖ピオ10世会の件を教会法2261条(カトリック新教会法典1335条)に当てはめてみます。

 もしも、聖ピオ10世会の司祭が何らかの教会法上の処罰を受けていたとしたら、それが破門であれ、聖職停止であれ、処罰が宣告されていないわけですから、信者は聖ピオ10世会の司祭に、いかなる秘跡も、準秘跡も、裁治権の行為も、単に霊魂の善のためになるということを含めて全てのことを、正当ないかなる理由のためにも、求める権利があります。司祭は有効にかつ同時に適法に、信者の理由を吟味することなく、秘跡などを執行することが出来ます。

 カトリック新教会法典には「統治行為ACTUM REGIMINIS」ということが加えられています。これは非常に重要な点です。「統治行為ACTUM REGIMINIS」とは、カトリック新教会法典129条によると、裁治権と同じことです。つまり、カトリック新教会法典によれば、信者の霊的善のためには、立法的、行政的、司法的行為が必要とされればそれを為すことができるということなのです。

 信者の善のために与えられたこの特別な譲歩の原理に基づいて、聖ピオ10世会は、現在の教会における緊急的な状況のために、「教会法典委員会」を創立しました。この委員会は、修道者の請願や婚姻のケースなどに関して聖伝のカトリック信者の正当な要求に応え、調査する任務を負っています。

 近代主義者の聖職者たちは、全ての法と権利に反して、カトリック信者の持つ最も基本的で本質的な、救いの純粋な源に近づく権利を否定し、専制君主のように、新しいミサを信者に押しつけ、新しい秘跡を強制し、新しい公教要理と新しい聖書と、教会と世界に関する新しい概念を強要しています。このようなカトリック信者は、聖ピオ10世会に、助けを求めているのであり、聖ピオ10世会は彼らの正当な要求を拒むことが出来ません。私たちは彼らの正当な求めに答えているのです。そして、カトリック新教会法典の最終の条項を私たちの言葉としてこう言うだけです。「常に教会の最高の法である『霊魂の救い』を常に私たちの目前に置くこと。」

(つづく)