第67号 2002/11/12 殉教者教皇聖マルティーノ
アヴェ・マリア! ■ 質問です 諸聖人の祝日と初金曜日に、諸聖人の連祷を唱えました。 その中で、「聖なる永福の霊の各階級」というところがありますが、大天使と全ての天使の次にあるので、いったい天使以外に何の霊があるのか?と悩んでいます。教えてください。 ある神父様は「聖なる永福の階級とは天国に入った人々のことです」と答えをくださいました。この神父様は、聖トマス・アクィナス神学によりますと天使は13階級あるといいました。これは本当ですか。知りたいです。またこの神父様は、守護の天使は心をよめないと教えて下さいしましたが、どうなのでしょうか。 以前、ある人と天使のことで言い争ったのですが、天使を人間より下だと言わんばかりだったからです。 ■ お答えします ご質問ありがとうございます。 「聖なる永福の霊の各階級」(ラテン語でOmnes sancti beatorum Spirituum ordines)は、聖ミカエル、聖ガブリエル、聖ラファエル、全ての天使と大天使の次におかれ、洗者聖ヨハネ、聖ヨゼフ、を初めとする諸聖人の前に置かれていますから、明らかに、天の至福の純粋霊であるセラフィム、ケルビム、座天使、主天使、力天使、能天使、権天使、大天使、天使らのことです。 「天国に入った全ての人々」については、諸聖人の連祷の最後に、「全ての天主の聖人と聖女」という言葉があります。 聖トマス・アクィナス神学によると、天使は9階級(もっと正確に言うと3級9隊)です。 聖トマスは、神学大全第1部第108問の中で、天使らの聖なる位階秩序(Hierarchia)と階級(ordo)について取り扱っています。 全ての純粋な霊、すなわち天使たちは、大きな意味において唯一の天主の下にあるという意味では、天主を頂点として、天使、人間、全ての被造物が一つの聖なる位階階級に属しています。 しかし、別の意味で、同じ統治体系の下にあるものという意味において、人間の位階秩序と天使の位階秩序とは別のものであると言わなければなりません。何故なら、天使は純粋な知性的な霊ですが、他方で人間は感覚的な肉体を持つ理性を持つからです。 この第2の意味において、聖トマスは、3つの聖なる位階秩序Hierarchiaに属していると言います。この3つの位階秩序は、天使の認識様式に従って区別されています。 第1の位階秩序においては、全てのものの第1原理である天主から直接に照らされて認識するものです。 第2の位階秩序においては、創られた(=被造の)普遍原理に従って認識するものです。例えば「全体は部分よりも大きい」とか「同じ意味で、同じ条件で、AがAであり、かつ同時にAでないと言うことはありえない」とかということです。 第3の位階秩序においては、被造の普遍原理が個別に適応され、固有の原因に従う限りにおいて認識するものです。 聖トマスは、それぞれの位階秩序において、それぞれ3つの階級がある、と述べています。 聖トマスによれば、一つの位階秩序は、ちょうど一つの国が、裁判の階級、国を守るために戦う階級、畑で農業をする階級、etcといろいろな階級に分かれているように、いろいろな階級(ordo)に分かれていると言います。 天使のそれぞれの位階秩序においても、天使の職務と行為に従って、上級、中級、下級の、3つの階級に区別されると言います。
セラフィム、ケルビム、座天使、が一つの位階秩序 セラフィムは、イザヤの6:2に出て来ます。 ケルビムは、エゼキエルの10章に、 座天使 Thronus、主天使 dominatioは、コロサイ1:16に「玉座 thronus」「主権 dominatio」という名前で、 また、主天使 dominatio、力天使 Potestas、能天使 virtus、権天使 principatus は、エフェゾ1:21に「権勢 principatus」、「能力 potestas」、「勢力 virtus」、「主権 dominaio」と言う名前で出て来ます。 (ラテン語ではそれぞれそのまま天使たちの階級の名前になっています。) 大天使は、ユダの手紙の9節に、 天使は、聖書の至る所にあります。 聖トマスは「人の心を読む」には2通りあると言います。(神学大全第1部第57問第4項) 一つは、心の動きの結果外部に生じたものにおいて「人の心を読む」のであり、例えば、顔の微妙な表情や心臓の動きなどから心を察するのであり、これは天使のみならず人でも出来ます。 もう一つは、外部に現れなくとも、知性の内部にある考えや、意志においてある愛情などを「読む」のであり、これは天主にしか知られることがありません。 では、守護の天使は? 私たちが守護の天使に心の中で祈る時には? 私たちの心の動きは全て天主によって知られ、天主のみによって直接に手に取るように秘密なしに見通されています。天主は、私たちがする聖母や諸聖人や守護の天使への心の中での祈りを、至福の聖人や天使たちに伝えてくださり、聖人や天使たちは、天主において、間接的に、全てを見て知り、私たちの心の動きさえも知るのです。 カトリックの神学では、天使の階級が13あるとは、少なくとも私にとって初耳です。 ちょうど、太陽の回りを、水星、金星、地球、火星、木星、土星、天王星、海王星、冥王星の9つの衛星が回っているように、 天主様という正義の太陽の回りを、天使たちの9つの階級が、セラフィム、ケルビム、座天使、主天使、力天使、能天使、権天使、大天使、天使とあり、礼拝していると考えるのは、どうでしょうか? 勿論、天使たちは人間よりも優れたものです。 なぜ、神父様が13と間違ったのでしょうか? 不思議ですね。なぜ、その方が、天使を人間より下だと言わんばかりだったのか? 第2バチカン公会議の「現代世界憲章」という文書の中に、 「12(神の像である人間) 地上に存在するあらゆるものは、その中心および頂点である人間に秩序づけられなければならないということについて、信ずる者も信じない者も、ほとんど意見が一致している。」 と言うおかしなものがあるので、人間が全被造物の中心かつ頂点であると信じてしまっているのではないでしょうか?? 勿論、カトリック信仰は、「全ての被造物、存在するあらゆるものは、その中心および頂点である天主に秩序づけられなければならない」と宣言しています。 天主様の祝福が豊かにありますように! トマス小野田圭志 (聖ピオ十世会司祭) |