マニラのeそよ風

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第422号 2012/07/21 ブルンドゥジオの聖ラウレンチオの祝日



アヴェ・マリア!

 愛する兄弟姉妹の皆様、
 いかがお過ごしでいらっしゃいますか? 7月9日から14日までの聖ピオ十世会の総会のためのお祈りを心から感謝します。

 1976年6月25日、司祭叙階式の直前にモンシニョール・ベネリ(Mgr Benelli)は、ルフェーブル大司教様に、公会議の教会への真の忠誠(la fidélité véritable à l’Eglise conciliaire)のうちに働く司祭であるなら、今回叙階されなくても、その他の方法がある、聖伝のミサにおいて叙階をしてはならない、とパウロ六世の名前によって命じられました。この公会議の教会に対する従順を要求されました。

 そこでルフェーブル大司教は、自分はカトリック教会に忠実であり、公会議の教会などという新しい教会は知らない、というのです。では「公会議の教会」というものは、何でしょうか? 聖ピオ十世教皇様が回勅パッシェンディの中で、カトリック教会に近代主義者らが侵入して、その要職を占めてしまっている、と指摘しましたが、正にこの意味で、カトリック教会の目に見える組織はそのままで、近代主義者らがカトリック教会を占領してしまっているという状態のことです。

 カトリック教会と対立する「公会議の教会」とは、教会法的な意味における位階制度を持つ教会という意味ではなく、第二バチカン公会議の新しいイデオロギー(つまりカトリックの聖伝の信仰が排斥してきたイデオロギー)が、カトリック教会の位階制度の要職に入り込んでしまった、その毒に犯されてしまっている、乗っ取られてしまっている、という意味です。コンピューターのプログラムにウィルスが侵入したために、ウィルスの悪質なプログラムがコンピューターを犯しつつ、正常な機能をすることを妨げ、本来ならしてはいけない作動をしている、と喩えることが出来ます。

 教会法においては、目に見えるカトリック教会に属してはいながらも、第二バチカン公会議の誤謬を推し進めようとする限り、その要職に就いている人々は「公会議の教会」の一部なのです。この誤謬が教会内に広く浸透すれば浸透するだけ、教会は健康を害され、「公会議の教会」へと変質してしまいます。

 もちろん、本当の教会はただ一つしかありません。カトリック教会です。その他は、類比的な意味においての「教会」です。

 目に見える物理的なマシーンとしてのコンピュータ-は同じでも、ウィルスに感染してしまえばその性格は変わってしまいます。自動自己破壊を起こすこともすれば、本来そのために造られた機能を果たさずに、その存在目的それ自体を否定してしまうことさえありえます。機械は同一でも、ウィルス感染前後で互いに矛盾するプログラムを受けたからです。

 第二バチカン公会議の問題も、もしも目に見える位階制度つまり、ベネディクト十六世の言葉によれば「時の中で成長し、発展するが、常に同一のものであり続ける一つの主体」(カトリック中央協議会の訳によれば subject を「実体」と訳してあったが、ここでは「主体」と訂正した)を超えて、公会議の教えの内容とそのイデオロギーを論理的に考察する限り、公会議前後では互いに矛盾し、相互に断絶していることが分かります。入れ物が同一だ、だから、中身も継続性があるはずだ、とは現実から乖離した理論に過ぎません。

 今年は、第二バチカン公会議開催五〇周年です。だから、1976年にも、1988年にもそうしようとしたように、2012年にも「入れ物の主体が同じ教会なのだから、中身の違いは "改革" "刷新" と呼ぶことにして「連続」と見なそう、だから第二バチカン公会議を受け入れよう」とローマからの呼びかけがあったのだと思います。しかし、現実は、断絶が存在しているという事実です。この現実を認めることは、超自然の精神の欠如でも、カトリック教会への信仰の欠如でもありません。

 いいえ、むしろ、天主の御摂理の特別の介入によってのみ、天主のお定めの時に、天主のお望みの方法(多分に聖母の汚れなき御心を通して)で、カトリック教会に寄生している「公会議の教会」は終わりを迎えることでしょう。私たちは、全能の天主の御憐れみとその介入を信じています。

 確かに、第二バチカン公会議を信じる人々は、バチカン内部においてますます少なくなっているかもしれません。新しい第二バチカン公会議を知らない世代が誕生してきています。しかし、それはただ彼らが無知のために過ぎないのかもしれません。「第二バチカン公会議なんかどうでも良い」とは言いつつも、まさにその公会議の誤謬を純粋に信じているリベラルなだけなのかもしれません。もしもそうであるなら、教会の最高権威を持って、この革命の精神とイデオロギーを断罪し、排斥しない限り、「公会議の教会」はそのスピードは速かれ遅かれ成長し続けることでしょう。だから、私たちは教会法上の調整ということよりも、カトリック教会全体の利益のために、信仰を問題とし続けなければなりません。

 今年の聖ピオ十世会の総会の宣言は、天主様の御恵みとその御摂理とにより、そして聖母の汚れなき御心の御取り次ぎにより、信仰の問題を最優先させるという決議がなされたことを天主に感謝します。

 ルイス・キャロルの作品『鏡の国のアリス』の中に、「セイウチと大工」という詩があります。ディズニーのアニメでもこの部分が使われたりしています。セイウチと大工が、牡蠣を欺して食べてしまう、という話をおもしろおかしく歌うものですが、今回、このようなことが聖ピオ十世会に起こらなかったことを天主様に感謝します。(以前、日本語に訳したものですが、ご紹介します。)


セイウチと大工


セイウチと大工

太陽は海に輝く燦然と、
奇妙なことに真夜中なのに。

がっかりは機嫌を損ねたお月さん、
「お楽しみさえ台無しだわ」と。

砂浜は乾きに乾き、雲もなく
空を飛ぶ鳥一羽も見えず。

セイウチと大工は共に泣きながら
砂浜を見て浜辺を歩く。

「メイドらの一年がけの掃除なら、
砂をきれいに取り除けるかな?」

「お、牡蠣さん、一緒に散歩しませんか?」
牡蠣にセイウチ誘いの言葉。

年長の牡蠣は答えず、頭振る、
そんな誘いに載せられないぞ。

いそいそと四つの若い牡蠣たちは
身繕いしてお出かけ準備。

その他の四つの牡蠣も、また他の
沢山の牡蠣、後に続くよ。

セイウチと大工の後に行列で
牡蠣はぞろぞろ大行進だ。

「時は来た。話し合おうよ、いろいろと。」
いきなり止まり、セイウチは言う。

「おしゃべりをするのも良いが」牡蠣は言う。
「休む時間もいただけないか?」

「要るものは、お塩とお酢と食パンだ。
用意は良いか?牡蠣さんたちよ。」

「良い眺め今宵の海は格別だ、
ねぇ?牡蠣さんよ。」とはセイウチだ。

「わざわざと来てくれたのは感謝する。」
大工はパンを切ってつぶやく。

「牡蠣さんよ、欺したようで、すまないな。」
バターを塗るのに一心不乱。

「かわいそう、同情するよ、泣けてくる。」
セイウチは泣き、涙をこぼす。

「牡蠣さんよ、海に戻ろう、帰ろうよ。」
大工は牡蠣に優しく言うが、

牡蠣たちは答えることが出来ないんだよ、
一つ残らず食べられたから。


 今回は、2012年の聖ピオ十世会の総会の宣言 を提案します。


聖ピオ十世会総会宣言

外国語サイト リンク [DICI] Society of St. Pius X General Chapter Statement 20-07-2012


 聖ピオ十世会総会の終わりにあたり、尊敬すべき創立者マルセル・ルフェーブル大司教の墓に集結し、総会参加者各位、司教各位、管区長各位、聖ピオ十世会の最年長者各位は、総長と一致して、心からの感謝の思いを天に向かって挙げ、危機的状況にある公教会と、日に日に天主とその掟から遠ざかる一方の世間のただ中で、四十二年間に亘る我々の事業への天主の驚嘆すべき保護に感謝する。

 我々は聖ピオ十世会の全会員一人一人に、すなわち司祭各位、修道士各位、修道女各位、第三会会員各位、我々と密接な各修道会、そして親愛なる平信者各位にも、率直な意見交換と有意義な共同作業を特徴づけた今回の総会に際しての、絶えざる献身と熱心な祈りに感謝の意を表したい。寛大さをもって甘受されたすべての犠牲と苦しみは、ここ数ヶ月間に聖ピオ十世会が遭遇した数々の困難を克服するための助けとなった。我々は本来の使命における深い一致の絆を回復した。私たちの使命とは、すなわち、カトリック信仰の保存と擁護、善き司祭の養成、キリスト教世界の復興への努力である。我々は、将来あり得る教会法的正常化のための必要条件を決定し承認した。つまり、その場合、審議投票をする特別総会をその前に招集する、と決断した。

 霊魂の聖化は常に我々の内から始まるものであるということを、我々は必ず記憶すべきである。これこそ、愛徳のわざによって活気づけられもたらされる信仰の実りである。聖パウロの言葉によれば「私たちは真理に反してはなんの力ももっていないが、真理のためには力を持っている」(コリント後、十三章八節参照)また「キリストが教会を愛し、そのために命を与えられたように……そのようにして汚点(しみ)のない、聖なる者とされるべきである」(エフェゾ五章二十五節参照)

 総会は以下のことを信じる。すなわち、聖ピオ十世会の最重要義務は、教会に提供しようと意図する奉仕において、カトリック信仰を、現代においてまさに圧迫されているカトリック信仰を、これに対する止むことのない攻撃の苛烈さに対抗するという決心とともに、天主のおん助けをもって、純粋かつ完全な形で告白し続けることである。

 だからこそ、 ローマ・カトリック教会、我らの主イエズス・キリストが創設した唯一の教会、その外には救霊も救霊に導くいかなる手段も見いだせない教会における我々の信仰を再確認することは適切であると思われる。すなわち、教会が我らの主ご自身がそれを望んだ君主制的組織であること、このことにより地上におけるキリストの代理者たる教皇のみが、普遍的教会を統治する至高権力を持つという信仰、また、自然的及び超自然的秩序双方の創造主、全人類と社会全体が服従すべきお方、我らの主イエズス・キリストの宇宙的王権における我々の信仰を、である。

 聖ピオ十世会は、誤謬に汚染されたままに留まる第二バチカン公会議のあらゆる新規なことに関し、また公会議より発布された改革に関し、教会の不変の教導職の教えと宣言を支持し続ける。我々は、連綿と受け継がれたこの教導権のうちに確実な指針を見いだす。まさに、この教導権こそが、その教導の権威によって、全教会がいつもどこでも告白し続けてきた真理に完全に一致して、啓示された信仰の遺産を伝えている。

 聖ピオ十世会は、教会当局が聖伝への回帰することを許すような開かれた真面目な討論が可能となる来る日を待ちながら、教会の常なる聖伝のうちに、聖ピオ十世会の指針をも見いだす。聖伝は、時の終わりまで信仰の保存と霊魂の救いのために要求される教えを伝達し、これからも伝達するからだ。

 我々は世界中のさまざまな国々で、現在、カトリック信仰のために苦しみを受け、殉教までにさえ及ぶ迫害を受けているキリスト教徒たちに結ばれることを望む。祭壇の主の犠牲に一致して流された彼らの血は、教会の頭とその成員たちのまことの刷新のための保証である。古くからの格言によれば「殉教者の血はキリスト信者の種」だからだ。


 「最後に、我らは童貞マリアに、天主なるおん子の特権を、おん子の栄光を、天におけると同じく、地上におけるおん子の王国の特権をも注意深く守り給う童貞マリアに目を注ぐ。聖主の王国の敵どもに対するキリスト教世界の防衛のため、武装防衛のためにすら、なんと頻繁に聖母は介入してくださることか! 私たちは今日、外部からの敵よりも、さらに徹底的に教会を滅ぼそうとする教会の内部の敵どもを追い払ってくださるため、聖母に介入してくださるよう懇願する。聖母が離教と異端から私たちを遠ざけ、保護してくださるため、信仰の完全性のうちに、教会への愛のうちに、ペトロの後継者への忠誠のうちに、聖ピオ十世会の全会員たち、聖ピオ十世会とともに働くすべての司祭、信者たちを聖母が守り給わんことを。」

 「願わくは、大天使聖ミカエルが、天主の栄光のための熱心と、悪魔と戦うための強さを我らに起こし給わんことを。」

 「聖ピオ十世が、この混乱と虚偽の時代において、悪から善を、偽りから真理を識別するため、その知恵、知識、聖性の一部を分け与え給わんことを。」(マルセル・ルフェーブル大司教、アルバノ、1983年10月19日)

2012年7月14日、エコンにて




セイウチと大工
The Walrus and The Carpenter
Lewis Carroll
(from Through the Looking-Glass and What Alice Found There, 1872)

セイウチと大工


The sun was shining on the sea,
Shining with all his might:
He did his very best to make
The billows smooth and bright--
And this was odd, because it was
The middle of the night.

お日さまピカピカ海の上
力の限り照らしてる
波浪をすべすべキラキラに
するため全力つくしてた――
でもこれってなんか変
いまは夜のど真中。

The moon was shining sulkily,
Because she thought the sun
Had got no business to be there
After the day was done--
"It's very rude of him," she said,
"To come and spoil the fun!"

お月様、ぷんぷん照らしてる
だってお日さまが昼間のあとで
そこらをウロウロするなんて
ずいぶんでしゃばりと思ったから――
曰く『なんとも失礼だこと
のこのこじゃましにくるなんて!』

The sea was wet as wet could be,
The sands were dry as dry.
You could not see a cloud, because
No cloud was in the sky:
No birds were flying overhead--
There were no birds to fly.

海はとことんびしょぬれで
砂はとことん乾いてた。
雲一つ見あたらず、それというのも
空には雲がなかったから:
頭上を飛ぶ鳥もなし――
そもそも飛ぶ鳥なんかいないから。

The Walrus and the Carpenter
Were walking close at hand;
They wept like anything to see
Such quantities of sand:
"If this were only cleared away,"
They said, "it would be grand!"

セイウチと大工が
肩を並べて歩いてた;
こんなにたくさんの砂を見て
二人はおいおい泣いていた:
『こいつさえきれいに掃除すりゃ
なんとも豪勢だろうになぁ!』

"If seven maids with seven mops
Swept it for half a year.
Do you suppose," the Walrus said,
"That they could get it clear?"
"I doubt it," said the Carpenter,
And shed a bitter tear.

『女中七人にモップ七本
持たせて半年掃かせたら
きれいに片づけられると
思うかい』とたずねるセイウチに
『あやしいね』と大工は答え
辛苦の涙を流してる。

"O Oysters, come and walk with us!"
The Walrus did beseech.
"A pleasant walk, a pleasant talk,
Along the briny beach:
We cannot do with more than four,
To give a hand to each."

『おおカキ諸君、散歩しにおいで!』
とセイウチが差し招く。
『すてきな散歩、すてきな談笑
潮の浜辺に沿って
でも手を貸せるのは、
最高四匹までだよ』

The eldest Oyster looked at him,
But never a word he said:
The eldest Oyster winked his eye,
And shook his heavy head--
Meaning to say he did not choose
To leave the oyster-bed.

最年長のカキ、セイウチをながめ
でも一言たりとも発しはしない。
最年長のカキはウィンクして
重い頭を横に振る――
カキ床を離れたり
する気はないよというつもり。

But four young Oysters hurried up,
All eager for the treat:
Their coats were brushed, their faces washed,
Their shoes were clean and neat--
And this was odd, because, you know,
They hadn't any feet.

でも若いカキ四匹がいそいそと
大喜びで招待に応じ:
コートにブラシ、顔も洗い
くつもきれいにきっちりと――
でもこれってなんか変
だってカキには足がない。

Four other Oysters followed them,
And yet another four;
And thick and fast they came at last,
And more, and more, and more--
All hopping through the frothy waves,
And scrambling to the shore.

さらにカキが四匹つづき
そしてさらにまた四匹
そして群がりあわててみんなきた
そして次、次、もっと次――
みんな泡立つ波からピョンピョンと
岸辺めがけて押し寄せる。

The Walrus and the Carpenter
Walked on a mile or so,
And then they rested on a rock
Conveniently low:
And all the little Oysters stood
And waited in a row.

セイウチと大工は
一マイルほど歩いてから
具合良く低い
石の上にこしかけた:
そしてかわいいカキたちみんな
そこに並んで待っていた。

"The time has come," the Walrus said,
"To talk of many things:
Of shoes--and ships--and sealing-wax--
Of cabbages--and kings--
And why the sea is boiling hot--
And whether pigs have wings."

セイウチいわく『さあいろんなことを話し合う
ときがついにやってきた:
くつだの――ふねだの――封蝋や
王さま――はたまたキャベツなど――
あるいは煮え立つ海の謎――
またはブタの翼の有無』

"But wait a bit," the Oysters cried,
"Before we have our chat;
For some of us are out of breath,
And all of us are fat!"
"No hurry!" said the Carpenter.
They thanked him much for that.

『でもちょっと待ってよ』とカキたち叫ぶ
『みんなでおしゃべりする前に;
息をきらした子もいるし
ぼくたちみんな、デブちんだ!』
『あわてることはないよ』と大工。
みんなこれには感謝した。

"A loaf of bread," the Walrus said,
"Is what we chiefly need:
Pepper and vinegar besides
Are very good indeed--
Now if you're ready, Oysters dear,
We can begin to feed."

『パンが一斤』とセイウチ曰く
『それがもっぱら必要だ:
さらにはコショウと酢もあれば
それはなおさら好都合――
さあ親愛なるカキくんたちよ
よければ食事を始めよう』

"But not on us!" the Oysters cried,
Turning a little blue.
"After such kindness, that would be
A dismal thing to do!"
"The night is fine," the Walrus said.
"Do you admire the view?

『でもまさかぼくたちを』と叫ぶカキくんたちは、
みんなちょっと青ざめる、
『こんなに親切にしてくれたのに
それはなんともあんまりだ!』
『見事な夜だ』とセイウチが言う
『なんともすてきなながめじゃないか』

"It was so kind of you to come!
And you are very nice!"
The Carpenter said nothing but
"Cut us another slice:
I wish you were not quite so deaf--
I've had to ask you twice!"

『出てきてくれてありがとう
なんとも優しい子たちだね!』
大工の答はただ一言
「パンをもう一切れ頼む:
そんな上の空はやめてほしいね――
二度も三度も言わせるな!』?

"It seems a shame," the Walrus said,
"To play them such a trick,
After we've brought them out so far,
And made them trot so quick!"
The Carpenter said nothing but
"The butter's spread too thick!"

『こんなペテンをするなんて
これはなんとも恥ずかしい』とセイウチ。
『こんな遠くに連れ出して
あんなに急いで歩かせて!』
大工の答はただ一言
『バターを厚く塗りすぎた!』

"I weep for you," the Walrus said:
"I deeply sympathize."
With sobs and tears he sorted out
Those of the largest size,
Holding his pocket-handkerchief
Before his streaming eyes.

『かわいそうなきみたち』とセイウチ、
『心底同情してあげる』
セイウチ、嗚咽と涙に隠れつつ
選ぶはいちばん大きいカキばかり
ポケットからのハンカチで
涙流れる目を隠しつつ。

"O Oysters," said the Carpenter,
"You've had a pleasant run!
Shall we be trotting home again?'
But answer came there none--
And this was scarcely odd, because
They'd eaten every one.

『おおカキ諸君』と大工が呼びかける。
『なかなか楽しい道中だった!
ぼちぼち帰るとしようかね?』
でもこれに対する返事なし――
そしてこれってどこが変?
だって一つ残らず腹の中

(Copyright)
『鏡の国のアリス』 訳:山形浩生 プロジェクト杉田玄白正式参加作品