マニラのeそよ風

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第158号 2003/07/04 初金曜日


永遠の聖父の御ひとり子なるキリストの御血、我等を救い給え!

アヴェ・マリア!

■ 質問です

 離婚した人(この人もこの人の元配偶者も未信者です)と、付き合っている信者の方がいるとします。離婚歴のある未信者とカトリック信者は、再婚が可能なのでしょうか? 「パウロの特権」ということを聞いたことがあるのですが。「ペトロの特権」というのもあるのですか?


■ お答えします

 ご質問をありがとうございました。

 まず、ご質問に答える前に、このことをはっきりと確認しておきたいと思います。

 洗礼を受けた信者同士(夫も妻も2人とも受洗している)が、教会の前で有効な婚姻関係を結び、しかも、この有効な婚姻関係が、合法的な肉体関係によって完成していたとすると、片方の「死」以外のいかなるものもこの有効な婚姻関係を解消することが出来ません。そして生き残りのもう片方の方は、他方の死の後に、もし望むのなら、別の婚姻関係を結ぶことができます。

 さて、未信者同士(夫も妻も2人とも未信者)の合法的な結婚は、有効な結婚です。つまり同棲ではなく、罪の関係ではありません。

 しかし、この一方の未信者がカトリック信者になるとすれば、そして未信者の配偶者が、カトリックに回心することを拒み、カトリック信者と平和的に同居するのを拒否するのなら、この有効な婚姻関係が、合法的な肉体関係によって完成していたとしても、この婚姻関係は解消させることができ、カトリック信者となったものは、有効に別の婚姻関係を結ぶことが出来ます。

 この信仰をまもるための特権については聖パウロが教えているので、これを、パウロの特権と言います。

 (パウロの特権で注意して頂きたいことは、結婚の時には両者が共に未信者であったが、婚姻の後に一人が信者となった、と言うことです。そして新たに信仰を得た信者が、この特権を享受することが出来ます。)


 「ペトロの特権」というのも存在します。それは、次のような場合です。

 有効な婚姻関係で、しかも合法的な肉体関係によって完成していたとしても、

(1) 片方が未信者で、片方がカトリック教会以外で洗礼を受けた場合(例えば、プロテスタントとか英国教会など)、
(2) 片方が未信者で、片方がカトリック信者であるけれども、教会の許しを得てカトリック教会で結婚式を挙げた場合、

 彼らが、別居(例えば、民法上による離婚)をしたのち、未信者の方がカトリック信仰を得て、洗礼を受けたとします。すると教皇様は、受洗以前に結んだ婚姻関係を解消することが出来、このカトリック信者は新しい婚姻をすることが出来ます。この特権は、信仰の特権であって、教皇様だけが与えることが出来るので、ペトロの特権とも言われています。

 (ペトロの特権で注意して頂きたいことは、洗礼を受けている配偶者との結婚の時には自分は未信者であったが、「離婚」の後、自分は信者となった、と言うことです。そして離婚後に新たに信仰を得たこの信者は、この特権を享受することが出来ます。結婚の時、既に洗礼を受けていた信者には、このような特権はありません。また、信徒と結婚したあとで未信者だった配偶者が、まだ結婚生活中に洗礼を受けて、夫婦ともに信者として過ごしたあとでは、別れたくなったといっても、あとから信者になった側も、もともと信者だった側も、両方とも、別の人とは結婚できません。)

 ところで、話は少しずれるかもしれませんが、

(1) カトリック信者は、カトリック教会でカトリック信者と結婚しなければならない、
(2) カトリック信者が、カトリック教会以外でした結婚は、無効である、

 ということをここで、思い出したいと思います。

 もしも、

(1)' カトリック信者が、未信者とであっても、司祭の許可を得て、カトリック教会で、挙式したのなら、これは有効な結婚です。

 従って、数年後、未信者の方が「カトリックの信仰を続けるのなら離婚したい」と、信者の方に言った場合、カトリック教会の目から見れば、離婚は不可能です。日本の民法上の離婚が成立したとしても、少なくとも、カトリック信者にとってはこの結婚が有効なので、カトリック信者は、金輪際、別の方と再婚することは出来ません。

(2)' もし、カトリック信者が、未信者とカトリック教会の外で、(例えば、神式とかで)結婚した場合、この結婚は無効なので、民法上は合法であったとしても、天主の目から見ると彼らの夫婦生活は同棲であって、罪の状態です。

 従って、彼らは一日も早く、教会の前で結婚し、正常に戻るか、
あるいは、分かれなければなりません。

 ですから、数年後、未信者の方が「カトリックの信仰を続けるのなら離婚したい」と、信者の方に言った場合、それは、離婚ではなく、同棲状態を放棄することです。

 もしも、結婚の数年後、未信者の方が「カトリックの信仰を続けるのなら離婚したい」と、信者の方に言って別れてしまった場合、カトリック信者は、正式の妻以外の誰とも再婚(重婚=二重に結婚すること)は出来ず、別居のみすることが許されます。

 「再婚(或いは重婚)」というのは「妻以外の女性との非道法な同棲状態」であって、「再婚」と単なる「正式の妻との別居」とは違います。もしも、日本の民法上「離婚」が成立したとしても、カトリック信者がカトリック教会で結婚したのちに別居したのなら、これは天主の前では「離婚」ではありません。なぜなら、一方が死ぬまで、有効な婚姻関係だからです。ですからこの民法上の「離婚」は、天主の前では、単なる「別居」です。つまり、婚姻状態にある夫婦が「別居」している事になります。

 もしも、カトリック信者がこうして別居をしていたとしても、妻以外の別の「パートナー」と同棲していなければ、(別居の状態であるだけならば)、聖体拝領は出来ます。あくまでも再婚をしない限り、つまり生涯一人で居るのなら、 聖体拝領は出来るわけです。

 ご質問にお答えできたことを祈ります。

天主様の祝福が豊かにありますように!

文責:トマス小野田圭志 (聖ピオ十世会司祭)


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* 第160号で「ペトロの特権」に関して追加説明がありましたので、原文を修正してあります。
続きが第160号にありますので、そちらもあわせて御覧ください。



■ なぞなぞ

 前号の答えは:「リンボ」でした。

 なぞなぞの続きは、聖ピオ十世会の日本ウェッブ・サイトの掲示板 http://fc2bbs.com/bbs?uid=7603 で続けられます。お楽しみに!

トマス小野田圭志 (聖ピオ十世会司祭)